2010年9月1日

至適量の見つけ方
-Dose-Response Curve-


前回は、栄養療法と血液検査の関係についてご説明しました。今回は栄養療法をすでに始めている方に向けてのお話です。
勢い込んで栄養療法を始めたものの思うような症状の改善が得られない、数値も改善しないという時に私たちの関係は一つの重大な局面を迎えます。「効果が出るまでサプリメントを増やしましょう」と言った時について来られない人が必ず出てしまいます。栄養療法の特性をきちんと理解していただくことが重要です。
「一般的に薬や栄養素の効果は量に比例しない」ことが大変多いです。下の量反応曲線(Dose-Response Curve)を見てください。横軸が飲んだ量(血液中の濃度)縦軸が効果を表しています。しかも横軸は対数表示であることが多く、23倍ではなく10倍~100倍といった増え方を表しています。あるところで急に効果が大きくなることがわかるでしょう?そしてある濃度以上になると効果はほぼ一定になります。このように反応曲線がS字状になる薬や栄養素では効果が出る濃度を実現することが大変重要です(これを栄養医学では至適量と呼んでいます)。
ですから効果がなかった時に自分はこの図のどの位置にいるのだろうか、遙かに少ないのか効果の出る量の直前にいるのか想像力を働かせてみてください。
残念ながら、一人一人の至適量をあらかじめ推定することが出来ません。「やってみて初めてわかる」ものです。これは前々回に述べたように遺伝的な体質差があるためです。
栄養療法のもう一つの特性は安全域が広いということです。Dose-Response Curveの右図を見て下さい。効果を青、副作用を赤線で示しています。青と赤の幅は安全域を示しており広いほど量の許容範囲が広くなります。薬では安全域が狭いので1日量上限がきちんと決められています。薬と違い栄養素では安全域がたいへん広いので「多めに服用」しても心配はいりません。
効果的な服用には血液検査によるフィードバックが必要です。自分の至適量を見極めるためには2回目以降の検査が大変重要です。1回の診断で終わらせずに必ず定期的に検査を受けて下さい。

「医学とは患者とともにはじまり、患者と共に在り、そして患者とともに終る」
ウィリアム・オスラー