2010年12月1日

ホメオスターシスの破綻と回復への道筋


分子整合栄養医学の考えに立つと、通常の食事をしているほとんどの人は潜在的に何らかの栄養欠乏を持っていることになります。栄養摂取を増やせばさらに健康レベルはあがります。ところが症状と栄養欠乏の程度がいつも一致するわけではありません。また、欠乏が進む時期と発症の時期が一致しないこともあります。皆さんも強いストレスを受けたり消耗する出来事が起こったりした時に、その最中には症状が出なかったのに落ち着いてしばらくたってから具合が悪くなったという経験はありませんか。

大きな災害に合った、精神的にショックな出来事に見舞われた、張り切るような大きなプロジェクトを任された、など全く違った性質のものでも、体は同じような「ストレス」と感じます。ストレスとは生体内に影響を及ぼすような環境の変化のことです。環境の変化に対し、生体は一定のよい状態に保とうとします(これをホメオスターシス生体内恒常性と呼んでいます)。ストレスが大きいほどホメオスターシスの維持にはたくさんのエネルギーと物質を必要とします。栄養欠乏が限界に近い状態であっても、材料がある限り体はホメオスターシスの維持をしようと頑張ります。そしてついに「ホメオスターシスの破綻」が起こったとき、材料はほとんど枯渇しています。この時点で初めて強い自覚症状があらわれます。

材料が枯渇してしまった場合、回復にはかなり時間がかかります。たっぷりと栄養素を補給し、ある程度の蓄えが出来てようやく活動を少しずつ取り戻していきます。またストレスが多い時期にはたくさんの活性酸素が出るので、傷ついた組織の修復をする必要があることも、時間がかかる理由かもしれません。

一般に欠乏状態が長年続いた時は治りが遅く、回復に必要な栄養素の量も多くなります。体への蓄積の程度や、長年かけて損なわれた組織の修復などが関係しているようです。したがって欠乏診断で一見数値が同じように見えても治り方の速さは個人差があり、それぞれが経てきた歴史によっても治り方が変わります。回復が遅いからといって焦ってはいけません。

とは言え、出来るだけ早く回復したいと思うのが人情です。早い回復には日頃の備えが一番です。まずホメオスターシスの破綻のきざしに早く気付くこと、ストレスがかかったと思ったらいつもより多く栄養素を摂取すること、限界まで頑張らずに早めに休養をとることです。

また、胎児期、幼児期からの長期の欠病症を予防するためには若い方や妊婦さん、子育てにかかわる多くの人へ栄養の重要性を啓蒙することが大切です。病気になる前にいかに健康レベルを上げることが出来るか、日頃の心がけが問われているのです。

 

「病気の治療薬よりも、それを防ぐ方法を私は探す」

ルイ・パスツール