2011年10月10日

食事療法の嘘?本当?
-脂質代謝②-


前回、脂質には大きく分けて中性脂肪とリン脂質、コレステロールの3種類がありそれぞれの形や働きも違うことを説明しました。今回は吸収された脂質がどのような経路をつかって運ばれるかを見てみましょう。

 小腸で吸収された脂質はすぐにたんぱく質と合体しリポ蛋白という塊をつくります。脂質が血液中を移動する時にはたんぱく質といつも一緒です。全身を回って中性脂肪やリン脂質を配って回ります。全身に早く配りたいものは外側に配置されます(図1)。中性脂肪やリン脂質などは一回全身を回っただけでほとんどが細胞に荷降ろしされます。

リポ蛋白の中央は脂溶性ビタミン(ビタミンAE)、コレステロールなどがしまわれていて蛋白と一緒に肝臓に取り込まれます。肝臓では、必要に応じてコレステロールや脂肪が合成され再びリポ蛋白の形で全身に運び出されます。1日に必要なコレステロールは食品に含まれる量だけでは足りず食べた量の23倍肝臓で合成されていると考えられています。

 


血液中のコレステロール、中性脂肪は実際にはリポ蛋白を測定しています。図2のようにリポ蛋白は脂質を細胞に配っていくにつれて密度や大きさが変わります。密度が変わると名前が変わります。悪玉といわれるLDLコレステロールも善玉といわれるHDLコレステロールもリポ蛋白の一形態です。HDLコレステロールはコレステロールを回収する力が強いので善玉と呼ばれるようになったのでしょう。 

 


 肝臓にはコレステロールの合成量を調節する機構があります。食べる量が多ければ合成量が自然に減ります。したがってLDLコレステロールが増えるのは食べるコレステロール量が多いからではありません。細胞が中性脂肪や脂肪酸をうまく受け取れない時(内臓脂肪の増加など)と血液中の活性酸素が増えてリポ蛋白が変形してしまった時です。そして内臓脂肪の増加と活性酸素の増加には血糖値の急上昇がおおいに関わっているのです。

 次回はいよいよ糖質制限食と高脂血症の関係に迫ります。ご期待下さい。