2011年11月10日

栄養療法に何が出来るか-生・老・病・死-
-生命の誕生①-


今回からは少し明るい話題生命の誕生です。医学が進歩した今でも生命の誕生が自然の神秘であることは変わりありません。栄養医学は生体が本来持っている機能を最大限に発揮できるように整えていく方法です。薬での治療が難しい分野=生命の誕生や成長においても大いなる力を発揮します。

 大人が日々生きていくにも多くの栄養素が働いていますが、胎児期にはたった1個の受精卵から数十兆個の細胞、総重量3kgのヒトを造り上げるのですから莫大な栄養素が必要です。栄養療法が妊娠・出産・子供の成長にどのような可能性を広げることが出来るのか、一緒に見ていきましょう。

不妊治療と栄養療法

 赤ちゃんが欲しいけれども恵まれない不妊。一口では説明出来ないほど様々な要因があるでしょう。子供を授かることがすべてではありませんが、悶々と悩んでいるのであればぜひご相談を! 意外なところに原因があるかもしれません。

 生命の誕生は神秘です。たったひとつの受精卵から数週間でヒトの形が出来上がります。その間細胞分裂と細胞の消滅、役割分担(分化)が発生プログラムに従って間違わずに進んでいきます。赤ちゃんを育てるには、赤ちゃんが育つだけの十分な栄養素が必要です。母体に栄養不足があったり身体的または精神的な大きなストレスがかかったりしていると、体は胎児を十分に育てられる条件がそろっていないと判断します。その結果排卵が止まったり、受精したのに着床(受精卵が胎盤に定着して育ち始めること)が成功しなかったりします。男性側に要因がある場合もあり、精子を分裂させたり成熟させたりする栄養素が不足していると受精がうまくいきません。

 栄養欠乏はカロリーの多寡では判定出来ません。赤ちゃんの細胞を分裂させ体を造り上げる栄養素にかなりの余裕があることが大切です。若い女性のほとんどはが欠乏しており不妊の大きな要因となっています。鉄以外にもたんぱく質が不足していたり、ビタミンBが不足していたり、ビタミンEが不足していたりと様々な要因があります。栄養解析では、様々な栄養欠乏を診断することが出来ます。栄養が改善すると辛かった体調や精神状態もかなり改善します。結果として自然妊娠に至る方もいます。まずは本来の体を取り戻すために栄養療法を始めましょう。

胎児初期の栄養

 胎児の初期(受精直後から7週ごろまで)は細胞分裂が大変に活発で分化による器官の形成も行われます。妊娠に気づくころには心臓や脳・脊髄などがほぼ出来上がっています。胎児の大きさはまだ大変に小さくカロリーはあまり必要ありません。細胞の分裂と分化、胎盤形成の助けとなる栄養素の摂取を増やしましょう。細胞分裂に必須の亜鉛、分化を助けるビタミンA、遺伝子やたんぱく質の合成に不可欠なビタミンB群やたんぱく質、胎盤を形成し血流を増やすための鉄などをどんどん摂ってください。安全性を考えて必ず食品または天然型のサプリメントから摂りましょう。この時期に葉酸が欠乏していると神経の管がうまく閉じることが出来ずに二分脊椎や無脳症、心臓の奇形などが起こります。葉酸はビタミンB12や他のビタミンと一緒に働くので葉酸だけではなくビタミンB群全体を摂りましょう。

 つわりが起こるのもこの時期です。妊娠前からしっかりとした栄養を摂っているとつわりも軽くすむことが分かっています。特にビタミンB6はつわりの予防に役立ちます。


 お腹が目立つころにはつわりも軽くなってきます。いよいよ赤ちゃんが大きくなる時期の始まりです。

次回も、妊娠後期の栄養や合併症・早産の予防、授乳期の栄養などを取り上げます。お楽しみに。