2011年11月10日

ビタミンEの話
-抗不妊因子として見つかったビタミンE-


ビタミンEの化学名はトコフェロール(tocophErol)と言います。tocosは分娩とか子供、phEroは引き起こすという意味です。この名前から想像されるように不妊ネズミの実験から妊娠を起こしやすくするビタミンとして1922年に発見されました。妊娠活性が最も高いのはαトコフェロールという形で現在のビタミンE製剤はこの安定誘導体です。

その後、ビタミンEには抗酸化作用があることがわかりました。つまり活性酸素やフリーラジカルを消去する役割です。特にコレステロールや細胞の脂質膜などを酸化から保護する役割をしています。この抗酸化作用はαトコフェロールが最も弱くβγδトコフェロールの方が強いのです。ところがビタミンEの活性は妊娠活性で決められているので、ビタミンE製剤や市販の合成ビタミンEαトコフェロールが中心となっています。抗酸化作用を期待するのであれば天然型ビタミンE、特にγδを多く含むものでないと効果が出ません。

ビタミンEは図のような構造をしています。2つつながった環にOHが1つついていてこのHが抗酸化作用を持っています。ぎざぎざの脚のところも重要で、細胞脂質膜に入り込んで自在に移動しています。

 


ビタミンE製剤は、安定性を保つためにOHの大切なHを別の形に変えてしまっています。その結果ビタミンE製剤の多くは胆汁と一緒に排泄されてしまい、体内に入った分も抗酸化作用があまり期待できないことになります。天然型ビタミンそのものを薬に出来ないのは大変残念なことです。抗酸化作用を期待するのであれば天然型ビタミンEを摂りましょう。

 次回はビタミンEの多彩な働きについて説明します。