2012年2月10日

食事療法の嘘?本当?
-血糖値と酸化ストレス-

 前回まで、糖質制限食と脂質の話をしてきました。その中で動脈硬化の原因は酸化・変形したリポ蛋白という話を繰り返し述べてきました。酸化とは何でどのように起こるのでしょうか。

 酸素が関わる重要な代謝が体内にはたくさんあります。代謝反応中にエネルギーの高い酸素、反応しやすい酸素が作り出されます。これが活性酸素です。活性酸素は両刃の剣で代謝には役立ちますがただちに消さないと、周囲の正常組織を傷つけてしまいます。フリーラジカルも活性酸素と同じで電子を奪い、正常組織を傷つけます。フリーラジカルと活性酸素は相手を酸化することで性質や形を変えます。

 酸化する力と消去する力のバランスを酸化ストレスの強さと定義することにします。活性酸素やフリーラジカルの方が多ければ、酸化ストレスは強い、消去システム(抗酸化物質や抗酸化ビタミン)が十分にあれば酸化ストレスは少ないと表現します。

 糖尿病では、酸化ストレスが大変強い状態になります。血液中のぶどう糖は200mg/dlになると血液中のたんぱく質などと化合物を作ります。(グリケーション)。この結果出来たアマドリ化合物は糖化最終産物に変わり活性酸素発生のもとになります。またこの化合物は沈着するだけでなく、合併症に通じる余計な反応を引き起こします。

 

 困ったことに、酸化を消去するシステム自体もグリケーションにより酸化消去力が低下します。酸化が増え抗酸化が減り酸化ストレスは大変大きくなります。酸化ストレスは血管や正常組織を破壊します。

 血糖は低ければよいというわけではなく、急激な上昇や下降も合併症を増やすと考えられています。空腹時の血糖値を下げることに神経質にならず食後のピーク時の血糖値を抑える(180mg/dl未満)工夫をしましょう。インスリンや経口糖尿病薬を使用するときにも急激な血糖の低下を起こさないことは大変重要です。次回は糖尿病と細胞内の酸化ストレスについて説明します。