2012年4月20日

虚血はなぜ怖い?


先ごろ天皇陛下が冠動脈のバイパス手術を受けられました。心筋梗塞の診断や治療法に皆様の関心が集まったのではないかと思われます。心臓の筋肉に酸素や栄養を送る動脈(冠動脈)が動脈硬化を起こして細くなると、心筋梗塞や狭心症の危険が高まります。一時的な血流の低下が狭心症、血流の途絶により心筋細胞が死んでしまう状態が心筋梗塞です。

心臓の筋肉は昼夜休みなく動いているため酸素や栄養素の供給が途絶えるとたちまち困ったことになります。特に酸素が足りなくなると、15分程度でミトコンドリア(細胞の中の呼吸を担っている器官)の機能が低下し、60分ほどで心筋細胞の変化や筋肉繊維の破壊が起こります。3時間程度でATP(エネルギー分子)を合成する酵素が壊れてしまいます。

今は治療法が発達していますから、心筋梗塞を起こした後で薬やカテーテルにより冠動脈を開通させる治療を施すことが出来ます。ただし血流が再開したからといって手放しに喜ぶことが出来ません。

 


ミトコンドリアにはATPを発生させるために鉄を含んだたんぱく質酵素がたくさん存在しています。虚血により酵素が壊れて鉄が露出します。またエネルギー産生の途中で出来た水素原子が行き場を失いうろうろしています。そこに酸素が来ると大量の活性酸素が発生します。この時にビタミンCやビタミンEなど活性酸素を消去する物質がないと組織に大きな傷害を起こしてしまいます。また不整脈も頻繁に起こります。ですから心筋梗塞は起きてから治療するのではなく予防することが大切です。

太い血管の動脈硬化を推定するには頸動脈エコーが大変有効です。またカテーテル検査をしなくても冠動脈CTなどで冠動脈の狭窄が診断出来るようになってきました。予防には抗酸化ビタミンが威力を発揮します。何事も日頃の備えが重要です。