2012年5月20日

病気はなぜ起こる?
-活性酸素と肝臓病について-


活性酸素と動脈硬化、活性酸素と発がんについてはだいぶ知られるようになってきましたが、活性酸素と肝臓病の関連はあまり知られていないようです。

エネルギー産生を行うミトコンドリアは活性酸素の発生が大変多い場所です。ミトコンドリアでは酸素を使ってATP(エネルギー)を作る反応が行われており、ATPを作る過程で日常的に活性酸素が発生しています。肝臓には細胞1個あたり1000から2000個と通常の細胞よりもはるかに多くのミトコンドリアが存在しているので活性酸素の危険性も高いのです。

 


通常は活性酸素を消去するシステムが働いて活性酸素の害は最小限に抑えられています。ところが何らかの原因で消去システムが減少したり活性酸素の発生が増えたりすると細胞に傷害が起こります。

肝臓のペルオキシソームという場所ではアルコールや薬物の解毒も行われこの際にも活性酸素が発生します。また脂肪を分解するβ酸化の際にも活性酸素が発生します。肝臓の細胞は活性酸素の危険に常にさらされていると言えるでしょう。

 細胞や小器官の膜は脂肪酸とたんぱく質で出来ています。活性酸素により脂肪酸が酸化して脂肪酸ラジカルになります。脂肪酸ラジカルは隣の膜を攻撃し連鎖反応が広がっていきます。細胞膜が壊れると肝細胞中の酵素が漏れ出して血液中の濃度が上昇します。検査で肝臓の数値が悪い(肝酵素が上昇している)と言われた方は肝細胞が壊れている訳ですから放置すると大変なことになります。

活性酸素が増える時には肝臓の正常な働きが低下しエネルギー代謝がどこかで滞っています。代謝酵素の材料を摂りアルコール摂取を減らし内臓脂肪を減らしましょう。

日本人に多いウイルス性肝炎のうちC型肝炎ではミトコンドリアでのエネルギー代謝が障害されています。その結果活性酸素が増えて肝炎の悪化や脂肪肝、肝癌の発生に関与しているようです。ともすればウイルス治療に焦点が当てられているウイルス性肝炎ですが、ウイルス感染が持続していても代謝の改善や活性酸素の消去という治療の道が開かれているのです。