2012年9月1日

暮らしに役立つ栄養療法
-糖質制限食における脂肪の摂り方②-


今回は前回に引き続き脂質の摂り方について解説します。 必須脂肪酸が体の中で何をしているのか考えてみましょう。

細胞の膜は脂質二重膜とコレステロール、たんぱく質などから出来ています。脂質二重膜を構成しているのはリン脂質で頭部は親水性、脚は脂肪の鎖が2本つながった疎水性の構造をしています。たいていの場合脂肪鎖の1本は飽和脂肪酸ですべての炭素に水素が2個ずつついています。もう一本は不飽和脂肪酸で何ヵ所かの炭素が二重結合で結合しているため水素が1個ずつしかついていません。二重結合のまわりの水素の付き方によってシス型、トランス型があります。生体の脂質の約99.9%はシス型です。
 

マーガリンや加工食品に含まれるトランス脂肪酸は、生体が利用できないため多すぎると害をもたらします。ファーストフードにおいてトランス脂肪酸が規制されるようになったのはこうした知識が一般に広まったためです。

下図のようにシス型の不飽和脂肪酸は二重結合の部分で折れ曲がっています。二重結合の場所と個数により折れ曲がりの 程度や膜の柔らかさ、横への動きやすさなどが左右されます。




膜内での各脂肪酸の存在比率は、食べた脂質の比率に深い 関係があります。ですから脂質を食べる時には不飽和脂肪酸の種類と比率に気を配ることが重要です。また膜に存在する脂質の種類によって信号物質プロスタグランジンの合成比率も変わることがわかってきました。そこでますます脂質の種類が注目されるようになったのです。次回は必須脂肪酸とプロスタグランジンについて話を進めようと思います。