2013年9月25日

血液検査の読み方
-間接ビリルビン-


今回は間接ビリルビンの話です。でも検診の結果や病院の血液検査の結果には間接ビリルビンの項目はありません。

間接ビリルビン=総ビリルビン-直接ビリルビン 

の計算式で自分で計算してください。

間接ビリルビンとは何でしょうか? 赤血球はある寿命で壊れ、中のヘモグロビンは分解されます。ヘモグロビンのうち、鉄と結合するヘム構造が分解されてできた物質が間接ビリルビンです。間接ビリルビンは水に溶けにくく、肝臓で抱合されて溶けやすい形になって排泄されます。抱合されたビリルビンを直接ビリルビンと呼びます。間接ビリルビンは非抱合ビリルビンとも言います。

なんだか話が難しくなってきましたが、直接ビリルビンが上昇する病気は肝臓や胆のうの病気です。胆汁の流れが悪くなっている場合と思ってよいでしょう。間接ビリルビンが上昇した時には赤血球がたくさん壊れていることを意味します。血液を攻撃する免疫的な病気、細胞膜を守る膜たんぱく質の異常のほか、激しい運動で機械的な振動が強かったり運動に伴う活性酸素の発生が多い場合にも赤血球が壊れやすくなります。

赤血球の合成能力が正常の場合には、壊れた分の赤血球がどんどん作られるので網状赤血球の割合が増えます。網状赤血球は生まれたばかりの赤血球です。

赤血球は酸素を運ぶので活性酸素の攻撃を受けやすい細胞です。活性酸素から細胞膜を守るには細胞膜に脂溶性の抗酸化ビタミン(例えばビタミンEなど)をいきわたらせるのが効果的です。出来た活性酸素をすぐに消去してくれます。一般に運動は体によいと思われていますが、激しい運動を行って活性酸素の防御をしないと体や細胞を傷める原因となります。間接ビリルビンは活性酸素の防御能力を知る一つの手がかりになるでしょう。
 
 

ビタミンD濃度の測定


25(OH)ビタミンD濃度がひめのともみクリニックでも測定できるようになります。自費の検査ですが25(OH)ビタミンD濃度が測定出来るとビタミンD欠乏の有無がかなりはっきり診断できるようになります。

ビタミンDの検査には1,25(OH)2ビタミンD濃度もあります。この2種類の数値が意味するところはかなり違います。どのように違うの? という方のために少し解説します。

ビタミンDがカルシウムと協調して骨の強化に働くことは皆さんよくご存知だと思います。小腸や腎臓でのカルシウムを促進し、骨の細胞(破骨細胞など)に直接働きかけて骨のリモデリング(骨の破壊と再構築により骨の形や強度を維持すること)を正常化します。成長期のビタミンD欠乏による骨の変形はくる病と呼ばれています。また閉経後の女性や高齢者においてビタミンDが欠乏すると骨粗鬆症になりやすくなります。

ビタミンDはビタミンという名前がついていますが、核の中にある受容体に結合して遺伝子に直接働きかけます。ホルモンと似た作用です。ホルモンと似て遺伝子に直接働きかけるのですから、食べた量や血液中の量にその都度左右されると困ります。そこで活性化という 段階を経て働きます。1,25(OH)2ビタミンDは骨に働くように活性化された形ですから、よっぽどのことがないと濃度は一定です。ですから1,25(OH)2ビタミンD濃度を測定しても、ビタミンD欠乏かどうかはわかりません。

そこで25(OH)ビタミンD濃度の登場です。25(OH)ビタミンD濃度はビタミンDが肝臓で一段階活性化されて出来ます。最も活性を持つ1,25(OH)2ビタミンDの一つ前の段階です。 

ビタミンDにはカルシウムに関係ない作用もあります。例えばがん細胞の増殖抑制を抑制したり正常な分化を誘導したり、副甲状腺ホルモンの産生を調節したりします。発毛や免疫の調節作用もあります。ビタミンDの欠乏の有無によって骨以外に対する作用はおおいに変化します。またビタミンDサプリメントがどれだけ必要かの判定や飲んだ効果の判定にも役立ちます。ビタミンD不足が気になる方はぜひ25(OH)ビタミンD濃度の測定をご利用ください。

アンチエイジングを考える
-生きる力は食べる力①-


もたれてたくさん食べられない、食べているのに痩せる、痩せて力が出ないとおっしゃる方々がいます。痩せたい方にはうらやましい話かもしれませんが、痩せて力が出ない人にとっては切実です。食べる力は消化・吸収する力! カロリーだけでなく体に必要な栄養素をどれだけ消化・吸収出来ているでしょうか。

消化の初期段階で大切なのは咀嚼(かむこと)です。唾液が出て初期消化が始まるのに加え食道や胃、腸にも準備してね! と信号を送ります。次に胃ではたんぱく質を消化します。胃酸は出ていますか? 胃でたんぱく質を消化するための消化酵素は出ていますか?

胃酸と消化酵素の分泌能力を示す検査があります。ペプシノーゲン検査です。

胃はいくつかの領域に分かれていて、存在する細胞の種類が変わります。主に消化を担当する胃底部・胃体部では、壁細胞胃酸を、主細胞ペプシノーゲンIを、副細胞粘液を分泌します。出口近くは幽門前庭部と呼ばれ、幽門前庭部にある細胞はペプシノーゲンⅠⅠや消化管の蠕動や消化酵素の分泌を調節するホルモン様物質を出します。ペプシノーゲンは胃酸の助けを借りて鎖が切れ、たんぱく消化酵素ペプシンに変わります。

萎縮性胃炎にはいくつかのタイプがありますが、日本人に多い多巣性萎縮性胃炎は胃の出口付近=幽門前庭部から広がり、胃体部や胃底部の領域を減らしていきます。したがって、ペプシノーゲンⅠⅠを調べると胃粘膜萎縮が広がりを推定でき、ペプシノーゲンⅠを調べると胃体部での胃酸や消化酵素の分泌能力を推定することが出来ます。

日本人の萎縮性胃炎の多くはピロリ菌感染が原因です。ピロリ菌の感染の有無と胃粘膜萎縮の程度を組み合わせて判定する方法がABCD分類です。ペプシノーゲンⅠ/ⅠⅠ比が3.0未満でペプシノーゲンⅠが70未満の場合がペプシノーゲン陽性です。判定Dではピロリ菌がいないのにより重症の判定になっていますね。胃の粘膜萎縮が進み過ぎると、ピロリ菌の住む環境が悪化しピロリ菌が検出できなくなります。以前は住んでいたけど今はピロリ菌も住めないほど胃の変化が進んでいるということです。

ピロリ菌は胃癌の危険因子として最近注目が高まっています。次回はピロリ菌が胃粘膜萎縮を起こす機構や、なぜ胃癌が起きやすくなるのかについてお話ししてみたいと思います。