2015年2月14日

腸とストレス
-腸脳相関-

 19世紀の中ごろには、腸内細菌と腸、脳は双方向に影響を及ぼしていることが認識されていました。一時研究の発表が途絶えましたが2003年頃から再び注目されるようになり2012年にはNatureにレビュー(それまでの論文や研究を総括したもの)が掲載されるまでになりました。

例えば感情やストレスは迷走神経と腸壁神経系の経路を介して消化管の蠕動運動や消化吸収、食欲などに影響を与えます。叱られたり失敗したりすると胃が痛くなったり、緊張するとお腹が痛くなったり下痢になったり、ストレスが長期化すると食欲がなくなって体重が減るといった経験があるでしょう。腸の炎症ではこの経路が活性化され消化管からの信号が脳に送られます。

視床下部下垂体副腎の経路(HPA軸)も大切です。視床下部は飲食や睡眠、性行動などの本能に関わる行動、怒りや不安などの情動をつかさどる中枢であり、自律神経とホルモンの調節機構の司令塔でもあります。最近のいくつかの研究でHPA軸の働きが腸内細菌叢に影響を及ぼすことが確かめられました。ストレス刺激により乳酸菌やバクテロイデス属が減少しクロストリジウム菌種が増加したそうです。またその際に血液中の炎症物質(サイトカインなど)の増加も認められています。

腸と中枢神経系は双方向に情報交換していること、腸内細菌叢は中枢神経系の影響を受け、腸内細菌叢が中枢神経系と免疫、内分泌、自律神経に影響を及ぼしていることを考えると腸内細菌の改善なしにはストレスからの回復はあり得ません。ストレスからの回復時にはまず腸の改善から始めましょう。