2020年7月21日

栄養素と感染症



 新型コロナウイルスの治療においてはウイルスの増殖を抑えることと免疫暴走による組織障害を抑えることが重要です。アメリカの8つの州の大学病院ならびに関連病院の救急医療、急性呼吸器疾患、感染症の専門家が組織した「新型コロナウイルス(COVID-19)最前線におけるクリティカルケア・ワーキンググループ」ではステロイドと高濃度ビタミン、抗凝固剤とその他の治療を組み合わせたMATH+という治療プロトコルを発表しています(註1)。国際オーソモレキュラー医学会ではビタミンやビタミン、マグネシウム、亜鉛、セレンなどの摂取推奨量を発表しています(註2)


 栄養素が感染症にどのような役割を果たしているか見ていきましょう。第一関門は眼・鼻・口などの侵入経路における粘膜防御です。粘膜は粘液で覆われ抗菌タンパクやIgA抗体などが見張っています。IgA抗体の産生にはグルタミンとビタミンが必須です。ビタミンは抗菌タンパクの発現や細胞接着をサポートしています。亜鉛も免疫において重要なミネラルです。例えばビタミンを代謝して活性化したりリンパ球が分裂して抗体産生細胞に分化したりするのを助けます(註3)。亜鉛やセレンは抗酸化剤としての役割もあります。


 最近大きく取り上げられているのがビタミンです。ビタミンがインフルエンザの感染を予防したというデータは複数発表されていました(註4)。カテリジシンやディフェンシンなどの抗菌タンパクや細胞接着蛋白の発現に関わる一方、炎症性サイトカインを抑制し抗炎症性サイトカインや制御性T細胞を誘導したりして過剰な免疫を制御する役割を持っています。25(OH)ビタミン濃度が高いほどCOVID-19の感染率・死亡率が低い傾向があるという論文発表も出てきました。(図)(註5)さらなる研究結果が待たれるところです。
Am J Clin Nutr 1998; 68(suppl):447S–63S.
Nutrients 2020, 12, 988
註5Aging Clinical and Experimental Research(2020)32:1195-1198