2020年11月1日

慢性炎症と疾患

COVID-19ではウィルスの増殖そのものではなく、ウィルスをきっかけに起きた免疫暴走が肺炎や臓器障害の原因となり命を脅かすことを目のあたりにしました。このような炎症はCOVID-19に限ったことではなく身近に存在します。特に持続的な炎症のくすぶりは、自覚症状がないままに少しずつ臓器や血管、細胞や遺伝子に傷をつくり病気の原因になっています。


炎症の原因は「異物(=自分ではないもの)」や「余分なもの」です。異物の代表例は腸から侵入した食べ物のかけらや有害重金属、環境化学物質などです。歯周病菌や細胞に潜伏して感染するマイコプラズマ、リケッチアなどの病原微生物も炎症の原因です。また、体にもともと存在するものが代謝異常を伴うと炎症の原因になることがあります。例えば終末糖化産物AGEs)は体内のたんぱく質に糖が結びつき、さらに複雑な反応を受けて生成され蓄積します(ただし体内蓄積の一部は食べ物由来です)。AGEsは活性酸素の発生源になったり、AGEsのレセプターを介して炎症のスイッチを押したりします。内臓脂肪も炎症の原因になります。肥大した脂肪細胞は炎症や血栓を惹起するサイトカインを出し始めるからです。メタボリック症候群と単なる肥満の違いは炎症の有無なのです。


長引く炎症は「異物を除去する」という本来の役割を越えて私たちの体を壊します。働ける細胞が減り線維化して瘢痕(はんこん)が残り組織が硬くなっていきます。炎症の影響は臓器や血管という目に見えるレベルだけでなく細胞内のミトコンドリアや遺伝子にも及び、エネルギー産生に支障が出たり癌細胞の芽が生まれたりします。


 炎症の原因になるものは「入れない、溜めない、外に出す!」。口に入れるもの、吸い込むものの質をチェックしましょう。リーキーガット症候群では粘膜バリアが破綻しているため本来入るはずのない大きなたんぱく質のかけらや細菌の一部が入り込むことにより炎症を起こします。血液脳関門に隙間が出来るリーキーブレインでは神経やそれを支える組織の炎症が起きて発達障害や認知症の原因になることもあります。粘膜バリアを壊す要因をなくして健全なバリアを取り戻すことが大切です。


 炎症は用が済んだら素早く火消しをして収束させる必要があります。火消しに大きな役割を果たしているのが副腎です。炎症が長引けは副腎が疲れてきます。精神的なストレスに覚えがなくても隠れ炎症にさらされると副腎疲労症候群になってしまいます。


 振り返って、COVID-19の重症化リスクと言われる持病は慢性炎症状態です。オーソモレキュラーの手法によって炎症の原因を取り除き、体の働きを取り戻し、炎症を収束させる力を強める努力が病気の克服に役立つと思われます。