2022年6月1日

新型コロナウイルス罹患後症状

  新型コロナウイルスの捉えどころのなさは症状の多彩さです。無症状の人もいれば高熱、頭痛、肺炎などで全身状態が悪化する方まで差が大きいですし、はっきりした症状がなくてもだるさが長く続く方もいらっしゃいますよね。感染後に持続する症状の報告も多岐にわたり、嗅覚・味覚障害や呼吸障害、生活困難が長く続く方から罹患直後にはほとんど症状が無いのに少し経ってから強い倦怠感を訴える方までいらっしゃいます。


 新型コロナウイルス罹患後症状は、原因も病態も様々で個人差も大きいことから、残念ながら万人に効く即効性の治療法はないのですが、お困りの皆様に役立つ情報提供が出来ればと思います。


 まず、流行直後とは異なりコロナ後遺症外来やコロナ後遺症相談窓口は格段に増えています。症状によっては一般のクリニックでも対応出来る内容がたくさんあります。厚労省は20224月「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント第一版」を発行しました。インターネットなどでどなたでも入手可能です。埼玉県医師会の症例検討会が発刊した「新型コロナ後遺症(罹患後症状)診療の指針のための症例集」は漢方治療の実例や嗅覚障害に関する嗅覚トレーニングなどかなり具体的な内容に踏み込んでいて参考になります。


 周囲の理解が得にくい症状に、痛みやだるさ、立ちくらみ、頭がぼやっとする(ブレインフォグ)があります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は他のウイルス感染症後にみられる筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、体位性頻脈症候群のような自律神経失調症、マスト細胞活性化症候群などの病態が新型コロナウイルス感染症後にも起きているのではないかと提言しています。ウイルス感染を契機に神経の炎症が長引いたり画像には見えない微小血栓が関与したりしている可能性もあります。このような画像や検査データに表れない異常については機能性医学が役に立つかもしれません。


 私たちはコロナ後遺症外来を開設してはいませんが、慢性炎症の改善や栄養摂取による自然治癒力の向上、副腎疲労の改善がこのような病態に役に立つのでれば、方法を伝授したいと思っています。また耳鼻科領域では上咽頭炎(鼻腔の奥にあたる部分です)のBスポット療法によって治療を試みている先生がいて、ご紹介が出来ます。心療内科では、長引く症状によって精神的にダメージを受けた方の治療も積極的に受け入れています。


 何をどうしたらよいかわからないという方はぜひ一度ご相談ください。

 

1https://www.mhlw.go.jp/content/000935241.pdf

2https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/204845/syoureisyu0324.pdf

更年期には早めの備えを

  自分の意思でコントロールすることが難しいもの、それがホルモンと自律神経です。特に女性は排卵と月経に伴う女性ホルモンの変化に左右されます。突然泣きたくなったり、イライラしたり、便秘になったり甘いものが食べたくなったりします。前向きでエネルギッシュな性格が突然変わったように感じたら更年期の始まりかもしれません。イライラや不安感、不眠が強くなるほか、身体的な変化としては動悸や血圧上昇、ホットフラッシュ、耳鳴りなどが起きる場合があります。


NHKが行った「更年期と仕事に関する調査2021」では仕事に支障が出ている人が高率にのぼっていることも明らかになりました。厚労省も平成4年度中に「更年期障害が女性の日常生活に与える影響に関する調査研究」を実施する考えを示しています。アンケートでは更年期かと思ってもなかなか病院には行かない実情が浮かび上がり、婦人科に受診してもホルモンが正常だから、閉経していないからという理由で何も治療がなされなかったという回答も多かったそうです。更年期症状は閉経前から始まります。漢方やサプリメントなどホルモン治療以外の選択肢も増えてきました。まずは更年期に理解の深い婦人科にご相談ください。


女性ホルモンの変化に伴う症状は工夫によってある程度軽くすることが出来ます。隠れた栄養欠乏を見つけて改善しましょう。特に潜在的な鉄の欠乏は気分や睡眠にも関係します。ヘム鉄を摂ることにより確実に改善出来るものですから早めに検査をして改善させておきましょう。過多月経の方は子宮筋腫になっている可能性が高いので必ず婦人科でチェックしてもらいましょう。ビタミンEはホルモンバランスを整えるために役立ちます。γリノレン酸(月見草オイル)もかなり昔から月経前症候群に使われてきました。個人差が大きいのが難点ですが効果がある方には劇的に効果がある印象です。


さて、更年期を迎えると大きく代謝が変わるのがコレステロールとミネラルバランスです。これまで女性ホルモンの材料になっていたコレステロールが不要になるため急に血液中のコレステロール値が上昇し、治療を促されてしまうことがあります。こちらは甘い物を控えて加工食品ではないたんぱく質と食物繊維をしっかり摂っていれば半年ぐらいしてちょうどよい数値になるので慌てる必要はありません。一方カルシウムやマグネシウムなどのミネラルバランスの乱れは大きな問題です。特にマグネシウムは不整脈や筋力低下、こむら返りやむずむず脚症候群、不安、抑うつ、無気力、食欲不振など様々な症状に関係しています。


ストレスや睡眠、運動など基本的な生活習慣も整えましょう。更年期症状は長年の不摂生の棚卸し。これから迎えるセカンドライフに飛躍するための準備ととらえて積極的に取り組んでください。