2023年11月1日

ビタミンAをもっと有効活用しよう

 ビタミンDのサプリメントを摂っているという方が最近急速に増えていると思います。では、ビタミンAはどうでしょう。今回はビタミンDと関連して働くビタミンAについて皆様にお伝えしようと思います。

ビタミンADの活性型は、核内にある受容体に結合し遺伝子に働きかけて発現(遺伝子から目的のたんぱく質を作ること)を調節します。ビタミンA受容体やビタミンD受容体は甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの受容体と共通の構造を持っているため「核内受容体スーパーファミリー」と呼ばれています。これらがホモダイマー(同じものが二つ結合する)やヘテロダイマー(違うものが結合する)を形成して相互に関連しあいながら発現を調節しています。したがって、どれか一つでも足りなくなると調節バランスが崩れてしまう可能性があるのです。

もともとビタミンAは眼球乾燥症の改善や視細胞の明暗の識別をになうビタミンとして発見されましたが、レチノイン酸というビタミンAの活性型が核内受容体に結合することが解明され、細胞の分化・増殖の調節、精子や胎盤形成、腸管免疫やホーミングと呼ばれる免疫監視機構などに関与していることが判明し重要性が再認識されました。

 ビタミンAの重要性がわかったところで、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので過剰症を起こしやすいのではないかという誤解を解いておきたいと思います。ビタミンAの吸収貯蔵運搬は厳密な制御を受けています。貯蔵する時にはエステル型という無害な形になり肝臓のstellate cell星細胞)や脂肪組織、消化管、肺、腎臓などに存在する貯蔵細胞に貯蔵されます。血液中を運搬される時や細胞内に入って活性化されている時にもたんぱく質に結合し、作用が終わればすぐに効力のない形に変えられます。なお、薬のレチノイン酸誘導体は壊れにくいため過剰症があり得ますのでご注意ください。摂取する時は必ず「天然の前駆体(クルードなプレカーサー)」の形で口から摂取しましょう。

実は胃酸が少ない?あなたの治療はあっていますか

 胃の調子が悪い時、皆さんはどのような胃薬を飲んでいますか。「胃酸の分泌が少ない方が胃酸を抑える薬を長期間にわたって飲んでいる」というのは、実際によくある笑えない話です。胃酸が出ているかを見極める簡便な方法はペプシノーゲンセットという血液検査です。ペプシノーゲンは胃酸と胃の消化酵素の分泌を、ペプシノーゲンは胃粘膜の萎縮の程度をあらわします。ペプシノーゲンが低い方は胃酸を出す能力が低いことを意味します。胃粘膜の萎縮が進むとペプシノーゲンが上昇します。

この検査は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している場合にはどちらも高値になります。正しい数値を知るためには薬剤を中止して一定程度時間が経ってから検査してください。喫煙者はペプシノーゲンが上昇しやすく、飲酒者ではペプシノーゲンが低くなりやすいので注意が必要です。

低酸の状態が長く続くと栄養欠乏につながります。胃の消化酵素ペプシンは胃酸によって酵素活性のある形に変わるため、低酸はたんぱく質の消化不良につながります。鉄やカルシウムも胃酸が少ないと吸収率が低くなります。低酸の方は胃酸を抑える薬ではなく消化酵素の方が役立つかもしれません。

 ストレスはヒスタミンの生合成を促進し胃酸の分泌を促進させます。副腎皮質ホルモンの過剰分泌も胃酸分泌促進と胃粘液分泌の低下を招きます。やはりストレスの軽減はとても大切ですね。胃の働きをよくするため、食事の時はリラックスしていただきましょう。胸やけの症状が強い場合には、内臓脂肪増加による腹圧の上昇、食べてから寝るまでの時間が短いこと、お酒の飲みすぎ、炭水化物に偏った食事、不規則な食事時間などが原因になっている場合が多いので、まずは生活習慣を見直しましょう。

 胃粘膜の改善に役立つ栄養素にはグルタミンやビタミンAなどがあります。自分の状態に合わせた治療を選択していきましょう。

ピロリ菌は万病のもと

 

ピロリ菌が胃がんのリスクを高めるというのはかなり認知されるようになってきました。胃潰瘍や十二指腸潰瘍もピロリ菌をみつけて除菌すると治るということも知っていると思います。一方、無症状の方はピロリ菌がいないと思い込んでいないでしょうか。一昔前は70%もの方がピロリ菌を持っていました。水道水の普及やピロリ菌の除菌によって若い人の感染率はかなり減って10%程度になってきているようです。それでも両親のどちらかがピロリ菌に感染していた場合、ピロリ菌の感染率が高くなります。自分は無関係と思わずにピロリ菌のチェックをしてみましょう。というのも、ピロリ菌の感染は胃以外にもたくさんの疾患に関連しているからです。

ピロリ菌が関連していると考えられている疾患は、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、胃がん、胃MALTリンパ腫などの胃の疾患、特発性血小板減少性紫斑病、虚血性心疾患、脳血管障害、慢性蕁麻疹、自己免疫疾患など多岐にわたります。なぜこんなに多くの疾患に関係するかというと、毒素を細胞内に注入したり周辺にまき散らしたりするからです。ピロリ菌の毒素は慢性的な炎症を惹起したり、異常な免疫活性を起こしたりします。細胞内に注入された毒素は複数の経路で細胞増殖を促進したり、がんを抑制する機構を働けなくしたりします。ピロリ菌が住んでいる胃ではビタミンCの濃度が大きく低下します。萎縮性胃炎が進んでしまった人でも、ピロリ菌の除菌はがん化のリスクを少しでも下げるために意味があると考えられています。

 ピロリ菌は自分が住みやすいように胃酸を中和する働きを持っています。さらに周辺の細胞を腸粘膜に似た性質に変えていって胃酸や消化酵素の分泌を減らします。このような変化はSIBO(小腸内細菌異常増殖症)の原因になるので、SIBOかなと思ったら必ずピロリ菌のチェックをしましょう。ピロリ菌感染によって胃酸や消化酵素の分泌が減少すると、口腔内から入った菌を胃でしっかり死滅させることが出来ず、小腸上部の細菌増殖の原因となります。胃はたんぱくの消化に重要な働きをしているため、消化酵素の分泌低下はたんぱく質の消化不良につながり腸内の未消化物を増やします。小腸に過剰に存在する菌が未消化物をエサにさらに増殖します。

ピロリ菌の検査には胃カメラによる培養や組織検査、ウレアーゼ呼気試験、ピロリ菌抗体検査などがあります。ただ、これらの検査でも見つからないピロリ菌感染が一定程度存在します。ピロリ菌はバイオフィルムを形成しやすく、除菌をして陰性と判定されても潜在的に生息し続ける場合もあります。便中の遺伝子を検査するGI-MAP検査は、ピロリ菌検出の感度がよく、これらの潜在的なピロリ菌感染を見つけることが出来ます。GI-MAP検査ではピロリ菌の抗生物質感受性や保有する毒素遺伝子も検出してくれます。胃もたれが続く方、SIBOが治らない方は一度検査をしてみましょう。またピロリ菌を除菌した後も定期的な胃がんのチェックを忘れずにお願いします。

2023年9月1日

自律神経の可視化

  検査に異常がないのに体調が悪い、眠れない、不安で落ち着かないなどの状態を自律神経失調症と表現したりします。自律神経を評価する指標はあるのでしょうか。


 交感神経が緊張すると脈が速くなったり呼吸が浅くなったりします。質の良い睡眠はレム睡眠やノンレム睡眠がある規則で表れ、睡眠が一定の深さまで至ることを指します。これらの指標をモニターするために開発されたのがウェアラブルデバイスです。モニターする内容はデバイスの種類によって異なりますが、心拍数や呼吸数、体の動きなどを計測し健康に役立てようとしています。


 医療分野では古くから24時間心電図計でR-R間隔を測定していました。R-R間隔とは心拍と心拍の間の時間を指し、自律神経が正常に働いている場合は適切な変動を生じます。糖尿病などで自律神経の機能が低下すると変動が少なくなることが知られています。交感神経の緊張も変動を低下させ心血管疾患のリスクを高めることがわかっています。 睡眠時無呼吸症の診断では呼吸、脈波、酸素飽和度、胸や腹部の呼吸センサーなどを装着し睡眠時の気道の閉塞や無呼吸、低呼吸を調べます。睡眠時無呼吸症は、高血圧や虚血性心疾患などの病気になりやすく日中の眠気で日常生活に支障が出ることもあります。治療出来る病気なので、疑った場合は積極的に検査をしてみましょう。


 簡易の装置で自律神経や睡眠の状態を調べたい人向けに、当院では自由診療で睡眠ストレス解析検査も始めました。胸につけた小さな装置で心拍数や呼吸数、体の動きなどをモニターし、交感神経の緊張状態や睡眠の質などを解析します。解析課程は一部ブラックボックスですが自分のストレスや睡眠状態を評価し生活改善に生かしたい方はぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

ビタミンKの話

  今回はビタミンKの話です。ビタミンKは脂溶性ビタミンの一つで植物によって作られるビタミンK1(フィロキノン)と微生物によって作られるビタミンK2(メナキノン、MK-n)があります。nは側鎖の長さを示す数字です。卵や鶏肉など動物性食品にはMK-4が多く含まれ納豆にはMK-7が多く含まれます。ビタミンKの効果は1929年血液凝固を正常に維持するビタミンとして発見されました。凝固因子(血液を固めて出血を止める因子)は肝臓で作られ、そのうち、第IIVIIIXX因子とプロテインC,プロテインSが合成のためにビタミンKを必要とします。ワーファリンはビタミンK依存性の酵素(ビタミンK依存性エポキシドレダクターゼとビタミンKキノンレダクターゼ)を強く阻害し、凝固因子の凝固活性をなくすことによって血栓形成を予防するお薬です。


 その後、骨粗鬆症を予防する機能や動脈石灰化を防止する機能が発見されました。骨代謝に関わるオステオカルシンや、骨と血管に存在するマトリックス蛋白はビタミンKを必要とするたんぱく質です。オステオカルシンは骨形成を活発にするだけでなく膵臓のインスリン分泌や脂肪細胞のアディポネクチンにも関わっているというデータが出てきました。マトリックスGla蛋白は動脈の石灰化を予防する働きが知られています。


 ビタミンKはこれらのたんぱく質のグルタミン酸がγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)に変える反応の補酵素として必要です。ビタミンKが不足すると、グルタミン酸がGlaになれずにたんぱく質が働けません。骨粗鬆症マーカーのucOC(カルボキシル化していないオステオカルシン)はビタミンK不足を示すマーカーです。


 体内で活性化されたビタミンKが脳神経細胞を酸化ストレスから防いだり遺伝子発現に関わったりなど、骨や血管弾力維持以外のビタミンKの新たな作用の研究が進んでいます。ビタミンKのさらなる可能性が期待されます。

健康寿命の延伸

  厚生労働省の発表によると寿命は年々伸びて2020年の日本人の平均寿命は男性が8156歳、女性が87.71歳となっています。しかし、平均寿命と健康寿命の推移をみると、男性では9歳程度、女性では12歳程度の差がありその差は縮まっていません。健康寿命とは自立して生活が出来る期間のこと、他人の手を借りるのは決して悪いことではありませんが、人生の最後の10年もの間足腰が弱って寝たきりになったり認知機能が低下して一人で生活することが難しくなったりするのは残念なことです。


 抗加齢医学の分野では、早い老化は病気であり予防できるという考え方が主流になってきています。細胞老化の原因には糖化、酸化、炎症など色々ありますが傷ついた細胞ががん化しないように細胞分裂を停止するシステムがあることがわかっています。このような細胞は老化細胞と呼ばれ通常ならアポトーシスで自死したり免疫細胞によって除去されたりします。ストレスが積み重なったリ栄養が欠乏したりして体の機能が低下すると老化細胞が除去されずに臓器に蓄積し、サイトカインを出すようになります。サイトカインは慢性炎症を誘発してさらに老化が進みます。


 心筋細胞や神経細胞のように細胞が入れ替わらない組織において、細胞を新品に保つシステムにオートファジーがあります。オートファジーは細胞内のたんぱく質や消化器官を膜で包んで消化分解し、新たにたんぱく質を合成するリサイクルシステムのことです。オートファジーの活性化には、栄養を入れるタイミング、絶食するタイミングが重要のようです。個々の体の状態にもよりますが、朝はたんぱく質などの栄養をしっかり摂り、午前中に運動し、夕食は早め軽めにすませて、そこからしっかりと空腹時間をつくります。


 空腹時間が長くなると、脂肪をエネルギー源とするケトン体モードになります。ケトン体モードはサーチュイン遺伝子の活性化に役立ちます。サーチュイン遺伝子活性化によって作られたたんぱく質は遺伝子の修復や細胞をストレスから守る作用などがあり、抗老化に関係すると考えられています。サーチュイン遺伝子活性化は眠りの質にも関係します。


 高齢女性にとって骨粗鬆症は寝たきりリスクを増やす大きな要因です。特に大腿骨頭周辺は骨粗鬆症の変化が急激に起きやすく、骨折をしたあとの影響が強いので注意が必要です。たんぱく質、カルシウム、マグネシウム、ビタミンDK摂取と適切な運動によって予防を心がけましょう。骨粗鬆症の治療薬も多彩になっています。適切なタイミングで骨折を予防できるよう骨密度や骨代謝マーカーを使った定期健診を受けましょう。


 QOLを低下させる動脈硬化、認知症、骨粗鬆症など自分特有のリスクを見極めて健康寿命を延伸しましょう。

2023年5月1日

ミネラルはバランスが大事

 

ビタミンの許容量には幅があり、多く摂りすぎて問題になることはほとんどありません。一方ミネラルは同じ結合部位を複数のミネラルが取り合うことがあり絶対量だけでなく相互のバランスが重要になります。

 

オリゴスキャンは組織のミネラルを光で測定するすぐれた方法ですが、時々意外な結果が出ることがあります。血中亜鉛濃度が低いのにオリゴスキャンで亜鉛が高くなっている場合などです。症状として亜鉛欠乏があるのであれば、細胞内に亜鉛が入るのを過剰な銅が妨げている可能性があります。銅は活性酸素の消去や鉄の代謝、血管壁の強化などにも関わる必須ミネラルと考えられていますが、銅が過剰になると吐き気や腹部膨満などの消化管症状、甲状腺機能低下、疲労や不安などを起こすことがあります。ピルを服用すると銅濃度が上がることは有名な話で、ピル服用開始後に上記のような症状が悪化した場合には亜鉛を補充することにより銅とのバランスを取るとよいかもしれません。また有害重金属である水銀やカドミウムは亜鉛と同じ場所に強く結合するためキレーションをしないと亜鉛の効果があらわれない場合もあります。

 

複数のミネラルが結合して働く酵素ではどれか一つでも欠けると作用が低下してしまいます。亜鉛、マグネシウム、カルシウムが結合するアルカリフォスファターゼなどがその一例です。特にマグネシウムはカルシウムに比べて欠乏しやすいので注意しましょう。

 

甲状腺ホルモンの活性化にはセレンが関わっています。4つのヨウ素が結合して甲状腺から分泌され脱ヨウ素反応によって活性の高い甲状腺ホルモンに変わります。日本人は昆布などの海藻を食べる機会が多いのでヨウ素欠乏ではなくセレン欠乏によって甲状腺機能低下が起きることがあります。多過ぎず少な過ぎずミネラル補給を心がけましょう。

毒を排泄する力

 

地球上は有害化学物質や重金属にあふれています。ですが有害物質の被害をみんなが同じ様に受けるわけではありません。どこで違いが分かれるのでしょう。答えは排泄解毒能力の違いです。遺伝子の小さな個人差(SNPsなど)を検出する検査が比較的容易に行えるようになって、排泄の能力には大きな個人差があることが科学的にも裏付けられてきました。ある種の遺伝子差異(SNPs)は傑出した能力と関係すると同時に、排泄解毒能力の低下とも関係しています。その結果、腸内環境の悪化、栄養欠乏、有害物質の負荷が加わることによって脳の機能や発達に障害が出ることもあるのです。

 

解毒の多くは肝臓で行われ胆汁から腸内に排泄されます。有害物質は肝臓の中で一度活性の高い形になり他の物質と結合(抱合と言います)して水に溶けやすい形となって排泄されます。グルタチオン抱合、グルクロン酸抱合などが有名です。アルコールや添加物など解毒の必要なものが増えると解毒能力を超えてしまいます。また、肝臓に脂肪が溜まると脂質が酸化して炎症が起き、細胞が火消しに追われて解毒にまで手が回らなくなる場合もあります。

 

 肝臓から腸内への排泄経路でもある胆管がしっかりと開いていることや胆汁の分泌が活発であることも大切です。油脂の消化吸収が悪いと感じている方は胆汁の分泌が少ない可能性があり要注意です。便秘をすると有害物質が長く腸内にとどまり、再吸収されやすくなるので薬を使ってでも便秘を解消した方がよいでしょう。

 

 食物繊維を摂取し有用腸内細菌を増やすことは解毒にも効果的に働きます。また日々の生活において少しでも有害な金属や化学物質を入れないように気をつけることも大切です。そしてもっと大きな話としては地球全体の汚染を出来る限り減らしていくことも未来の子供たちを守るために大切なことだと思います。

腸は治療の要


腸の多彩な役割がだんだん知られてきました。消化・吸収はもちろんのこと、有害物質を入れないバリアとしての役割、体内の有害物質の排泄、そして免疫の司令塔、脳機能への影響など数えきれない作用があります。共生する腸内細菌も、代謝や栄養、気分などに大きな影響を持っています。

腸が整わないと体の中も整いません。食事を頑張っているのに痩せない、サプリメントを飲んでも効果が出ない、そもそもお腹が張って食べられないなど、様々な治療を行ってきたのに治療効果が上がらない方は、一度本格的に腸の状態改善を試みてみましょう。

これまで、IgG型食物アレルギー検査、尿中有機酸検査、腸内フローラなどで腸の情報を集めてきました。それぞれに有効な活用方法はあるものの腸の状態を直接見るには物足りなく、もう少し情報が得られないものかと思っていました。そこに登場したのがGI-MAPという検査です。GI-MAPには

  便に含まれる遺伝子を増幅し、病原菌やピロリ菌、真菌・酵母、ウイルスなどを検出

  常在菌のバランスを調べ見やすく表示

  膵臓の消化酵素や胆汁分泌などの消化吸収能力

  潜血や有害発酵物などを測定し腸の病気のリスクを発見

  免疫状態、炎症状態、リーキーガットの検査

が含まれています。

 例えばこれまでSIBOと診断されても具体的にどの菌が増えているのかがわかりませんでした。GI-MAPを使えば、病原菌や好ましくない常在菌の増殖が具体的にわかり、どの抗生物質を使用すればよいかが判断出来ます。通常の腸内フローラ検査ではわからないウイルスや寄生虫、胃カメラで検出できないピロリ菌などを発見してくれる点も大きな利点です。

 SIBOでは、乳酸菌のサプリメントなどを飲むとお腹が張ってしまうという方が多いのですが、有害な微生物を減らしたうえで少しずつ有用菌を補充していくと、良い腸内細菌が腸の蠕動運動を適切にする発酵物質やビタミンなどの栄養素を作り出してくれて、健全な消化管機能と蠕動運動が回復し良好な治療効果に結び付く場合も多いのです。

 GI-MAPを手掛かりに治療が成功したとして、治療効果を維持するためには適切な食事とストレス解消がとても重要です。神経伝達物質のセロトニンの80%は消化管で作られています。ストレスを感じると腸のセロトニン分泌も影響を受け、蠕動運動を変化させます。またストレス状態が消化酵素の分泌を減らし、有害な腸内細菌を増やす効果が知られています。

 検査と治療のサイクルを繰り返しながら、自分の望む姿に少しずつ近づいていきましょう。

2023年2月1日

AGEsと骨折リスク

骨折は骨密度が低い人だけに起きると思っていませんか。自分は骨密度が高いから大丈夫と思っていたのにある日転倒して骨折!という方は意外に多いです。特に糖尿病を持っている方に多く見受けられます。


骨折のリスクには骨密度だけでなく骨質も関係します。骨質とは鉄筋にあたるコラーゲンなどのたんぱく質とコンクリートにあたるカルシウムやマグネシウムなどを合わせた性質の事です。ご存知のように体はたんぱく質で出来ています。体の組織であるたんぱく質に糖がつく、つまりAGE化してしまうと体の構造や働きに影響します。コラーゲンも例外ではなく、特にコラーゲンを架橋している部分がAGEs化すると線維全体が硬くてもろくなります。歳をとると皮膚のたるみやしわ、黄ばみが気になりますよね。これがコラーゲンのAGE化です。骨の線維がAGEs架橋されれば線維構造つまり骨質が弱くなり骨折のリスクが高まります。AGEsは筋肉量や筋力の低下にも関係しています。筋力が低下すると動かなくなり、動けないことでさらに骨折リスクをさらに高めます。


 もっと恐ろしい話をしましょう。AGEsは細胞膜に存在するAGE受容体RAGEに結合するとNFkBを活性化して炎症を惹起します。NADPHオキシダーゼを介した経路で活性酸素を増やします。AGEsが酸化と糖化を亢進し、糖化と酸化がAGEsの産生を増やします。負のスパイラルです。


 糖尿病になるずっと前からAGEsの蓄積が始まっています。一度蓄積したAGEsは短期間では取り除くことが難しくなります。AGEリーダーや血清ペントシジンなどの測定により早めにリスクに気づき対処を始めることが大切です。

水素がつくる明るい未来

 水素H2は地球上で最も軽い分子です。この小さな分子が人類を救うほどの大きな力を持っています。我々が老化や病気の予防の時に度々問題にしている活性酸素と炎症を抑制する作用があるからです。


水素はとても安定な物質ですが、活性の高い活性酸素が近くにあると結合して安定化します。活性が低い活性酸素とは反応しないので選択的抗酸化作用と呼びます。活性の高い活性酸素はヒドロキシラジカルや過酸化亜硝酸塩などで悪玉活性酸素と呼ばれ組織障害性が高く、存在しない方がよい活性酸素です。活性の低い活性酸素とは過酸化水素、一酸化窒素ラジカル、一重項酸素などのことで、生体内で何らかの役割を果たしている可能性がある活性酸素たちです。


水素は、炎症を抑制することも知られています。基礎研究のレベルではNFκBを介して炎症を抑制することがわかっています。


 NFκBは炎症や細胞増殖、細胞死などに関する遺伝子の発現のスイッチを入れる因子です。


 ある種の防御因子で抗炎症作用を持つNrf2を刺激することも知られています。Nrf2は解毒や抗酸化に関わる酵素の発現を増やします。AGEsを直接減らす作用があることもわかっています。良いことづくめですね。


 水素は相手があればいつでも反応してしまうので、目的の臓器に届かせることが課題です。ですから効かせたい場所によって水素発生カプセルを服用したり、水素ガスを吸入したり生理食塩水に水素ガスを封入して点滴したりします。関節の炎症を抑えたい時には直接関節内に注射する方法もあります。みなさんも水素が効果を発揮するためには、どれだけの量をどのように体内に入れるかを考えながら選択してくださいね。

註2)辻直樹著「なぜ水素で細胞から若返るのか」を一部参考にさせていただきました。

血管年齢を若くする

血管はすべての臓器の細胞に酸素と栄養素を送ります。心臓、肝臓、腎臓などそれぞれの臓器には特有の老化の要因がありますが、そもそも血管が若く健全でないとすべての臓器が働けなくなってしまいます。小さな脳梗塞が積み重なれば脳細胞の機能が衰えて認知症のリスクも増大します。冠動脈が狭くなれば心臓の働きが弱くなり突然死のリスクが高まります。脚にいく血管が狭いと歩くことに支障が出て社会活動が減り、幸せに暮らせなくなってしまいます。


大きな血管では、プラークによる内腔の狭まりが問題になります。軟らかいプラークではそこから血栓が飛んだり爆発的な血栓が形成されたりして閉塞が起きるリスクがあります。プラークと言うと高コレステロールを思い浮かべる方も多いでしょう。でもコレステロールが正常でもプラークが出来る人がいるし、コレステロールが高くてもプラークが出来ない人もいます。プラークの最初のきっかけは血管の傷だからです。血管の内側では絶えず血管を脅かす出来事が起きています。血圧の上昇、血糖値スパイク、真菌・細菌やウイルス、毒素、喫煙、緊張など。特に食後の血糖値スパイクは日常的に血管を痛めます。健全な血管内皮であればそれらの衝撃をはねのけて血管を守ることが出来ますが、回数や程度がひどくなると衝撃を吸収したり修復したり出来なくなり血管の内側に傷が出来ます。傷を修復する過程でコレステロール(リポ蛋白(a)など)の修復分子が増産され沈積して動脈壁を仮修復します。これがプラークの正体です。


 血管を守るためには糖化・酸化・炎症を防ぐことが大切です。具体的には糖や質の悪い脂質を食べ過ぎないこと、喫煙をやめること、歯周病を治すこと、運動をして睡眠をしっかりとること、血圧を改善することです。単なる肥満なのか、内臓脂肪や肝臓の細胞の炎症を伴うメタボリックシンドロームなのかの見極めがとても大切です。検診で脂肪肝や高脂血症と診断されたら、薬で数値だけを下げようとせず、背景に隠れている糖化、酸化、炎症を改善しましょう。


 隠れ栄養不足も動脈硬化の要因になるという話を付け加えておきましょう。Hans W. Dielさんは健康的な生活をし、検診結果も完璧でした。ところがある日突然心筋梗塞を起こしてしまいます。薬を処方されましたが5年後再度の発作が起きます。必死に改善方法を調べ「ビタミンCや微量元素の不足によって動脈壁が弱く不安定になり、その結果修復分子としてのリポ蛋白(a)が高くなっている」という仮説を知りました。それからは自分に必要な量の栄養素摂取に励みリポ蛋白(a)が低下、心身ともに健康な状態が得られたそうです註1

 

 悪い物を体に入れない、良い栄養素を摂る

 

 健康で幸せな未来は与えられるものではなく自分でつかみ取るものです。私達は今年も皆様の健康のお手伝いをしていきます。

  註1「オーソモレキュラー栄養医学ニュースより抜粋」