2023年5月1日

ミネラルはバランスが大事

 

ビタミンの許容量には幅があり、多く摂りすぎて問題になることはほとんどありません。一方ミネラルは同じ結合部位を複数のミネラルが取り合うことがあり絶対量だけでなく相互のバランスが重要になります。

 

オリゴスキャンは組織のミネラルを光で測定するすぐれた方法ですが、時々意外な結果が出ることがあります。血中亜鉛濃度が低いのにオリゴスキャンで亜鉛が高くなっている場合などです。症状として亜鉛欠乏があるのであれば、細胞内に亜鉛が入るのを過剰な銅が妨げている可能性があります。銅は活性酸素の消去や鉄の代謝、血管壁の強化などにも関わる必須ミネラルと考えられていますが、銅が過剰になると吐き気や腹部膨満などの消化管症状、甲状腺機能低下、疲労や不安などを起こすことがあります。ピルを服用すると銅濃度が上がることは有名な話で、ピル服用開始後に上記のような症状が悪化した場合には亜鉛を補充することにより銅とのバランスを取るとよいかもしれません。また有害重金属である水銀やカドミウムは亜鉛と同じ場所に強く結合するためキレーションをしないと亜鉛の効果があらわれない場合もあります。

 

複数のミネラルが結合して働く酵素ではどれか一つでも欠けると作用が低下してしまいます。亜鉛、マグネシウム、カルシウムが結合するアルカリフォスファターゼなどがその一例です。特にマグネシウムはカルシウムに比べて欠乏しやすいので注意しましょう。

 

甲状腺ホルモンの活性化にはセレンが関わっています。4つのヨウ素が結合して甲状腺から分泌され脱ヨウ素反応によって活性の高い甲状腺ホルモンに変わります。日本人は昆布などの海藻を食べる機会が多いのでヨウ素欠乏ではなくセレン欠乏によって甲状腺機能低下が起きることがあります。多過ぎず少な過ぎずミネラル補給を心がけましょう。

毒を排泄する力

 

地球上は有害化学物質や重金属にあふれています。ですが有害物質の被害をみんなが同じ様に受けるわけではありません。どこで違いが分かれるのでしょう。答えは排泄解毒能力の違いです。遺伝子の小さな個人差(SNPsなど)を検出する検査が比較的容易に行えるようになって、排泄の能力には大きな個人差があることが科学的にも裏付けられてきました。ある種の遺伝子差異(SNPs)は傑出した能力と関係すると同時に、排泄解毒能力の低下とも関係しています。その結果、腸内環境の悪化、栄養欠乏、有害物質の負荷が加わることによって脳の機能や発達に障害が出ることもあるのです。

 

解毒の多くは肝臓で行われ胆汁から腸内に排泄されます。有害物質は肝臓の中で一度活性の高い形になり他の物質と結合(抱合と言います)して水に溶けやすい形となって排泄されます。グルタチオン抱合、グルクロン酸抱合などが有名です。アルコールや添加物など解毒の必要なものが増えると解毒能力を超えてしまいます。また、肝臓に脂肪が溜まると脂質が酸化して炎症が起き、細胞が火消しに追われて解毒にまで手が回らなくなる場合もあります。

 

 肝臓から腸内への排泄経路でもある胆管がしっかりと開いていることや胆汁の分泌が活発であることも大切です。油脂の消化吸収が悪いと感じている方は胆汁の分泌が少ない可能性があり要注意です。便秘をすると有害物質が長く腸内にとどまり、再吸収されやすくなるので薬を使ってでも便秘を解消した方がよいでしょう。

 

 食物繊維を摂取し有用腸内細菌を増やすことは解毒にも効果的に働きます。また日々の生活において少しでも有害な金属や化学物質を入れないように気をつけることも大切です。そしてもっと大きな話としては地球全体の汚染を出来る限り減らしていくことも未来の子供たちを守るために大切なことだと思います。

腸は治療の要


腸の多彩な役割がだんだん知られてきました。消化・吸収はもちろんのこと、有害物質を入れないバリアとしての役割、体内の有害物質の排泄、そして免疫の司令塔、脳機能への影響など数えきれない作用があります。共生する腸内細菌も、代謝や栄養、気分などに大きな影響を持っています。

腸が整わないと体の中も整いません。食事を頑張っているのに痩せない、サプリメントを飲んでも効果が出ない、そもそもお腹が張って食べられないなど、様々な治療を行ってきたのに治療効果が上がらない方は、一度本格的に腸の状態改善を試みてみましょう。

これまで、IgG型食物アレルギー検査、尿中有機酸検査、腸内フローラなどで腸の情報を集めてきました。それぞれに有効な活用方法はあるものの腸の状態を直接見るには物足りなく、もう少し情報が得られないものかと思っていました。そこに登場したのがGI-MAPという検査です。GI-MAPには

  便に含まれる遺伝子を増幅し、病原菌やピロリ菌、真菌・酵母、ウイルスなどを検出

  常在菌のバランスを調べ見やすく表示

  膵臓の消化酵素や胆汁分泌などの消化吸収能力

  潜血や有害発酵物などを測定し腸の病気のリスクを発見

  免疫状態、炎症状態、リーキーガットの検査

が含まれています。

 例えばこれまでSIBOと診断されても具体的にどの菌が増えているのかがわかりませんでした。GI-MAPを使えば、病原菌や好ましくない常在菌の増殖が具体的にわかり、どの抗生物質を使用すればよいかが判断出来ます。通常の腸内フローラ検査ではわからないウイルスや寄生虫、胃カメラで検出できないピロリ菌などを発見してくれる点も大きな利点です。

 SIBOでは、乳酸菌のサプリメントなどを飲むとお腹が張ってしまうという方が多いのですが、有害な微生物を減らしたうえで少しずつ有用菌を補充していくと、良い腸内細菌が腸の蠕動運動を適切にする発酵物質やビタミンなどの栄養素を作り出してくれて、健全な消化管機能と蠕動運動が回復し良好な治療効果に結び付く場合も多いのです。

 GI-MAPを手掛かりに治療が成功したとして、治療効果を維持するためには適切な食事とストレス解消がとても重要です。神経伝達物質のセロトニンの80%は消化管で作られています。ストレスを感じると腸のセロトニン分泌も影響を受け、蠕動運動を変化させます。またストレス状態が消化酵素の分泌を減らし、有害な腸内細菌を増やす効果が知られています。

 検査と治療のサイクルを繰り返しながら、自分の望む姿に少しずつ近づいていきましょう。