2010年3月1日

鉄の話 ①


私たちの体になくてはならない鉄は「金属」です。しかも反応性の高い「遷移金属」です。私たちの体は反応性の高い鉄を代謝反応に利用することで様々な利益も得ましたが、鉄が体に害を及ぼす「両刃の剣」であることもよく知っていました。その結果体に害を及ぼさないように23重の防御機構をめぐらしたのです。

金属と言っても、鉄粉が血液中に浮かんでいる訳ではありません。体内の鉄は「ヘム」という構造やたんぱく質にしっかりと包み込まれています。吸収された直後には小腸の上皮細胞内のフェリチンと結びついて一度貯蔵され、「鉄が必要だ」という信号が来ると血液中のトランスフェリンに結びついて運ばれます。常にたんぱく質からたんぱく質への受け渡しが行われて外にむき出しになることは絶対にないのです。たまたま腸に鉄が過剰に入ってきた場合にはヘモジデリンという重合蛋白を作って小腸の細胞ごと2-3日以内に便から外に排泄してしまいます。つまり口から摂っている限り鉄は過剰になることはありません。

鉄イオンを注射した場合はどうでしょう?血液中のたんぱく質は可能な限り鉄を結合しようとしますがたんぱく質が不足していたり急激に鉄が入ってきたりした場合はむき出しの鉄イオンが活性酸素を作り出し生体に傷をつけることになります。何かを与える場合には「腸という生体の調節機構を通すこと」が重要です。

 

「鉄は口からヘム鉄として」

 

 次回は、鉄の働きについてお伝えします。