2010年5月1日

鉄の話 ③


貧血と鉄欠乏について~鉄欠乏の診断~

 前回は鉄が欠乏するといかに悲惨な症状が出現するかという話をしました。鉄が足りないのではと感じている女性は多いのですが「検査をしたら貧血ではなかったので鉄欠乏ではないと思います」とおっしゃる女性が多いのです。

「貧血でなければ鉄欠乏ではない」というのは本当でしょうか?

 酸素は生きるために最も重要です。体は酸素運搬の赤血球(ヘモグロビン)を最優先で作り続けます。赤血球でさえ十分に作ることが出来ないほど鉄が枯渇して初めて「貧血」になります。貯蔵鉄が本来の必要量を切ると、生命維持に不必要な部分から切り捨てていきます。たとえば「肌が荒れる」「抵抗力が落ちる」「情緒不安定」「冷え性」「不妊症」などは貧血がない人でも起こる鉄欠乏の症状です。

 貯蔵鉄の量を反映するのは血液中の「フェリチン」という値です。体に異常がない状態ではフェリチンは貯蔵鉄に比例します。ただし、貯蔵鉄を含んだ細胞が壊れると血液中のフェリチンも上昇しますので注意が必要です。

 フェリチンの目標値は100から125の間ぐらいです。閉経前の女のフェリチンを測ってみるとほとんどの方が40未満です。つまりほとんどの方が潜在性鉄欠乏症だということになります。また最近は食生活の変化に伴い男性の鉄欠乏も増えてきました。

 まずは自分が鉄欠乏であることに気づくこと!そこから治療が始まります。鉄は「イオン鉄」より「ヘム鉄」の吸収がよいのでぜひ「ヘム鉄」の形での摂取をお勧めします。また、鉄の吸収や運搬にはたんぱく質が必要です。「たんぱく質とヘム鉄」の同時摂取で健康な明日を創りましょう。