2010年8月1日

ビタミンB群③
-神経伝達物質の材料-


前回まではエネルギーやたんぱく代謝にビタミンB群が重要という話をしてきました。今回はビタミンB群と神経機能についてちょっと話をしてみましょう。手足を動かすのも神経、考えや感情、記憶も複雑に絡み合った神経細胞(と神経細胞を助けるグリア細胞やアストロサイトなど)の働きによるものです。血圧を調節したり汗をかいたり、ドキドキしたりというのも神経の調節を受けています。

神経内の命令の伝達は「電気信号」によって行われ、神経細胞と神経細胞の連絡は「神経伝達物質」によって行われます。セロトニン、ドーパミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、GABAなどの神経伝達物質の名前は聞いたことがありますか? 実際には分かっているだけでもっともっとたくさんの種類の神経伝達物質があります。

神経伝達物質の多くはアミノ酸からつくられます。アミノ酸を神経伝達物質に変える酵素の多くがビタミンB群を必要とします。たとえばセロトニンでは、葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6が最低限必要です。ドーパミンとノルアドレナリンの合成には葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6、それからビタミンCが必要であり、抑制系の神経伝達物質であるGABAには、ナイアシン、ビタミンB6が必要になります。

脳と血液の間には、血液脳関門と言って水溶性物質が通過しにくい仕組みがあります。血液中の物質がやたらに脳に入ってしまうと脳の働きが攪乱されてしまうからです。上手に材料を入れて神経細胞自身が合成と分解をコントロール出来るように助けてあげるのが大切です。ついでに言うと血液脳関門があるのでGABA入り食品を食べても脳のGABAは増えません(あくまで材料を入れてあげて下さい)。

分子整合栄養医学の基本である「複数の栄養素をバランスよく、多めに与えてあとは細胞に任せる」という鉄則がここで生きることになります。

次回は、ビタミンB群と核酸の意外な関係について述べることにしましょう。