2011年7月10日

栄養療法に何が出来るか-生・老・病・死-
-がんの自然史-


東大病院で放射線治療を担当しているteam nakagawa(中川恵一先生およびスタッフの皆様)は311日の福島第一原発の放射能漏れ事故以来、忙しい診療のかたわらツイッターやブログで情報を発信し、現地の放射線被ばく状況を調査したり住民と対話したりしながら具体的な対策を提言してきました(放射線について有用な情報が載っております。興味のある方はぜひご覧ください)。

そのブログに「そもそもがんとは何か」と題してがんとはどのようにして起こるか、私たちはがんをどのように考えたらよいかということも述べてあります。治療を受ける一人一人が病気の本質を理解し治療法を選ぶ時代が来ていることを感じます。そこで栄養医学はがんをどのようにとらえ、どのように対応しようとしているかを述べてみることにしました。(ここから先の内容は中川先生とは無関係です。予めご了承ください)

まず、がん細胞は周囲からのコントロールを失って増殖する細胞ということはご存知ですね。ではがん細胞はどのくらい出来にくいかということを考えたことはありますか? がんが発見されたとき、多くの方は「直前にがんが出来た」と考えがちですがそれは全く違います。最初の1個の細胞から目に見える大きさになるためには109乗個程度まで増える必要があり、そのためには(一部の特殊ながんを除き)約20年もの期間がかかると考えられています。

 


がん細胞に変わるには、いくつものステップが必要です。まずDNA(遺伝子)のうち分裂や分化を制御する場所に変異が起こること(一つではなく数個)、外界からの情報を伝達する細胞膜と情報伝達機構になんらかの異常が起こることが最低条件となります。細胞に異常が起きるとほとんどはがん細胞になる前にアポトーシス(細胞死)を起こして消えてしまうか、免疫機構がしっかりと働いていれば免疫細胞によって除かれてしまいます。がん抑制遺伝子といって無制限の増殖が起こらないように抑える仕組みもあります(この遺伝子に生まれつき異常がある方はがん細胞が出来る確率が高いことがわかっています)このように私たちの気付かないうちにがん細胞は出来ては消滅を繰り返しています。

がん細胞が目に見えるほど大きくなる背景には、遺伝子や細胞膜の異常が積み重なるだけでなく、不均一(・・・)()がん(・・)細胞(・・)集団(・・)の中でちょっと凶暴な(増殖速度が速く防御機構を突き破りやすい)細胞が現れ、がん細胞の力が免疫力を上回ってしまうという要素が必要です。皆さんは見つかったあとのがんの様子しか知らないので凶暴な部分だけを見ることとなりとてつもなく恐ろしいものと思ってしまうのですね。

がんの予防は見つかる前が重要ということになります。次に小さいうちに発見すること、発見した時にすでに大きければ、がん細胞を減らしつつ、いかにがんと共生するかが治療のかぎとなります。

次回は、具体的にがんの予防と治療について説明します。