2011年8月10日

ナイアシンの話①
-潜在性ナイアシン欠乏症を見逃すな!-


ペラグラという病気があります。重症のナイアシン欠乏症のことです。皮膚、消化管、脳に症状が出ます。例えば太陽の光にあたると赤い発疹が出、その後もなかなか治らずに発疹が茶色に変色してうろこのようになります。また消化管全体に異常が起き、舌と口が炎症を起こして赤くなります。舌が腫れ、口がヒリヒリし、口内炎が生じます。のどや食道にもヒリヒリした感覚が生じます。その他、吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの症状があります。欠乏がさらに続くと疲労、不眠、無感情が現れます。そして、治療をしなければ脳の機能不全(脳症)が続いて起こります。錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こります。

日本では、重症のビタミン欠乏症(脚気やペラグラなど)は存在しないと思われています。でも軽度の欠乏症つまり潜在性欠乏症の方はかなりいるのではないでしょうか? 日光過敏症で日に当たったところが赤く腫れるとか、下痢や便秘や口内炎を繰り返すとか、記憶力の低下や疲労感が起こるとか。思い当たることはありませんか? 欠乏症と診断できればビタミンを補うだけで不快で困った症状が改善するのです。

ナイアシン欠乏では聴覚過敏症も起こります。本来気にならないような日常の音、人の話し声や街頭のスピーカーの音、食器や楽器の音などを異常に大きく不快に感じる病気です(ただし耳の問題で起こることもありますので検査が必要です)本人の苦痛は大変大きいのになかなか理解されません。ナイアシン欠乏が原因ならナイアシン服用で治ります。

統合失調症に特徴的と考えられている症状には幻覚、妄想、睡眠の障害、集中力の低下、感情の鈍麻、意欲の低下などがあります。統合失調症と診断された方の一部にナイアシン欠乏症の方がまぎれているかもしれません。欠乏症と診断出来たかどうかでその後の運命が大きく変わるのですから精神科の先生方はナイアシン欠乏の可能性を頭の片隅に考えながら診断していただきたいものです。ただしナイアシン単独欠乏のことは少なく他の栄養素の欠乏も伴うことが多いので改善には試行錯誤が必要です。

次回はナイアシンの働きや必要量について説明する予定です。