2011年8月10日

暮らしに役立つ栄養療法
-脳梗塞の予防-


6月から8月にかけて脳梗塞の発生頻度が高いそうです。知らないうちに脱水になって血液の循環量が低下するためと説明されています。適切な水分補給はもちろん大切ですが、血栓を防ぐ体の仕組みを維持することはもっと大切です。

血管の最も内側にあり血液に接している内皮細胞は、血栓を防ぐ役割を持っています。内皮細胞が傷ついて細胞の働きが低下すると動脈硬化が起こり、その場所から爆発的に血栓が出来ます。内皮細胞を傷つける要因は何でしょう?

一つは血液中を流れるリポ蛋白(脂質たんぱく複合体)の酸化と変形です。血糖値が高い時には糖とたんぱく質が化学反応を起こして変形します。また中性脂肪が高い人では異常に小さいリポ蛋白(small dense LDL)が増え、これがたいへん酸化しやすいことがわかっています。酸化・変形した蛋白は内皮細胞の隙間から血管壁に侵入しマクロファージによって食べられ蓄積します。

 


血圧の急激な変動も危険因子になります。特に夜間に血圧が下がらない方や、明け方に急激な血圧の上昇がある方は要注意です。寝ている間の血圧は24時間自動血圧計で測定できるので、自分の血圧パターンを一度調べてみることもお勧めです。

歯周病菌などの細菌も動脈に炎症を起こす可能性があります。歯と全身は関係ないと放置せず、常日頃からきちんと予防、治療することが大切です。

食べ物による予防は、3つのポイントを押さえましょう。

          血糖値の上昇を防ぎ、ビタミンB群により糖と脂質の代謝を正常化する

          活性酸素を消去する栄養素をしっかり摂る

          ω3系の脂質(EPADHA)の摂取割合を増やす

ω3系の脂質は血栓形成のシグナルになるトロンボキサンA2を減らし血栓を予防するプロスタグランジンI2の割合を増やします。

水分をとっても、血液中を流れるたんぱく質、特にアルブミンの量が少ないと血管外に出て行ってしまいます。アルブミンは膠質浸透圧によって血管の中に水分を引き戻す働きをしているからです。むくみやすい方はたんぱく質の合成を増やすような栄養素を摂りましょう。

必須栄養素をしっかり摂り、脂質バランスを工夫し、水分を補給することが脳梗塞の予防になります。結局熱中症対策や夏バテ対策と同じなんですね。