2011年11月10日

食事療法の嘘?本当?
-脂質代謝③-


いよいよ今回は糖質制限食と脂質の具体的な関係について見ていきましょう。

 私たちが薬を飲んだり食事療法をしたりするのは何のためでしょうか? 将来の病気を予防するためですね。つまり動脈硬化を予防して脳梗塞や心筋梗塞にならないようにするのが目的です。血液中のコレステロールはリポ蛋白(脂質たんぱく複合体)で運ばれることを前回お話ししました。血管腔に接している内皮細胞の間をすり抜けて動脈硬化を起こすことが出来るのは酸化・変形したリポ蛋白だけです。リポ蛋白の量はフィードバック機構によって調節されています。コレステロールは必要なだけ肝臓で合成され、合成量は食事から吸収される量の2-3倍に及びます。

糖質制限食を行うとLDLコレステロールが上昇する人がいます。そのような人はやっとコレステロールを合成する能力を持ったことになります。つまりカロリー制限食の時は材料であるたんぱく質とビタミンB群などの栄養不良のため合成が出来なかったということです。コレステロールは体の機能を発揮させるために大変重要なものです。直後に急激に上昇してもフィードバックにより2-3か月でその方にとって理想的な量に落ち着きます(仮に基準値を超えていてもその人にとっては理想値となります)。

 最近動脈硬化を起こす原因として中性脂肪を多く含んだ小型リポ蛋白(small dense LDL)が注目されています。このsmall dense LDLは利用されにくいうえに酸化しやすく、動脈硬化を起こしやすいことから最近では超悪玉と呼ばれています。small dense LDLは内臓脂肪とともに増えます。内臓脂肪に最も関係が深いのは糖質・炭水化物とインスリンの過剰な分泌です。

糖質制限食を開始すると、直後から中性脂肪の低下や体脂肪率の減少が見られ持続します。また糖質制限食は血糖値を安定させるため、細胞内や血液中の酸化を減らすのに大変役立ちます。こうして見ると、糖質制限食は動脈硬化の予防におおいに役立つと思うのですがいかがでしょうか。