2012年2月10日

子どもの栄養療法
-まず家族の食卓を豊かにしよう-


子どもを育てる上で大きな悩みの一つは、何を食べさせようか、好き嫌いをどうしたらよいかといった食事の問題ではないかと思います。栄養療法を始めて実感したことがいくつかあります。

 Simple is Best

(料理ではなく食材を大事に!)

 空腹は最上のソース

(お菓子やスナックで空腹を紛らわさない)

 生きることは食べること

(食べ物で日々の体が変わっていく)

サプリメントを使った栄養療法というと人工的なイメージがありますが、基本は豊かな食材の栄養をそのままいただくことにあります。あくまで食事が基本であり体質的に不足する栄養素をサプリメントで補うという考え方が重要です。

世代間で同居することが少なくなったり、親一人と子どもだけの食卓が多くなったりするとどうしても子どもが好きな物を作りがちですね。これでは食材の幅が狭くなってしまいます。親はまず自分自身の健康のために食事を作りましょう。毎日の食材を豊かに変化させていけばそれだけ栄養素不足の可能性が減っていきます。子どもには少量ずつ、味付け薄めで食べてもらえばよいのです。

子どもの時は灰汁(あく)の強いもの、苦みや香りの強いものはあまり好きではないのが普通ですから食べなければ無理強いせずまた次に料理した時に出してみます。子どもが食べないからといって、子ども用に別に料理を作るのはあまりお勧め出来ません。親が楽しそうに食べていればそのうち食べるようになると楽観しましょう。最終目標は「楽しく健康的な食事が出来る大人」に育てることです。気長に楽しく子育てしましょう

子どもに必要な栄養とは成長に必要な栄養素

体重当たりの代謝が活発で成長を続ける子どもには、体を構成したりエネルギーを産生させたりする栄養素がよりたくさん必要です。基本は妊娠期に必要な栄養素と同じです。たんぱく質、ビタミンB群、ビタミンC、鉄、亜鉛、カルシウムやマグネシウムなどが重要でしょう。脳や神経細胞も発達するので必須脂肪酸(EPADHA)やレシチンなどの脂質も食べさせたいですね。加工食品を出来るだけ使わずに素材の味を覚えてもらいましょう。作っても子どもが食べてくれない場合は、あまり神経質にならずいつか食べると開き直りましょう。子どもに合ったレシピなどお気軽に栄養士にご相談ください。

子どもにも低血糖があります

いくつから機能性低血糖症の可能性があるのでしょう? 5歳程度でも低血糖症の症状が出ることがあります。実際に当クリニックでは10歳のお子さんに糖負荷試験を行って低血糖症であることを確認したことがあります。

低血糖症は甘いものを食べると一時的に落ち着きます。常に糖分を欲しがるようになることから糖中毒という呼び方をすることもあります。親もついつい甘いものを多く与えがちになり低血糖症を悪化させてしまいます。子どもは一般的にお菓子やピザなど糖質・炭水化物が好きですからやめるのには忍耐がいります。

でも一度糖質・炭水化物をやめる期間を長くとることが出来れば、本人が「お菓子を食べた後は不調になる」と気付くようになります。幼稚園生でも小学生でもよく話をすれば理解してくれます。

親も一緒になって炭水化物やお菓子をやめましょう。親もさらに健康になります。

子どもが不登校になった時

栄養ですべての不登校が改善するわけではありません。でも私たちのクリニックでは小児精神科や心療内科と提携して多くの不登校の方の相談に乗っています。不登校の原因の一つとなる体調不良の原因に栄養の問題があることが多いからです。

その際に次のようなことを心がけ、相談の方々にもお話しています。

  不登校の状態にある子どもをまるごと受け入れる
(そのままでも十分素晴らしい)

  栄養療法の目的はその人本来の力を発揮させることにある
(人それぞれ、到達点は異なる)

  最終目標は健康で自立し自分の能力を発揮できる大人になること
(学校に行くのは手段の一つであって目的ではない)

物心ついたお子さんの場合の栄養療法は、大人とほとんど同じです。血液検査をし、ご本人にもよく理解、納得していただき、サプリメントを含めて食事の実践をしていただきます。

とは言え、お子さん自身がこういった治療法を望まない場合もあるでしょう。その場合にはまずご両親自身が栄養療法を実行してみてください。栄養療法の利点は誰でも安全に毎日の生活で実践できることです。親が出来ないことを子どもに強制してはいけません。

栄養療法を行うことで親自身が抱えていた問題に気付くでしょう。家庭全体で食事に対する意識や食材を変えていき精神や体の変化を実感していければ、おのずからよい方向に向かうのではないでしょうか?

中学高校を不登校で過ごしても自分の希望する大学に進み好きな学問をしている子どもや自分の希望する職業についた子どももいます。子どもがのびのびと能力を発揮できるようにゆったりと見守りましょう。

次回は成長期~受験期の栄養についての話題です。お楽しみに!