2016年3月1日

24時間働けますか?
―心臓は偉い―

栄養医学は細胞内の一つ一つの分子の働きを理想に近づけることを目標にしながら、体を一つの小宇宙と考え、全体を一つのシステムとみる考え方です。「心臓だけの治療」「肝臓だけの治療」ではなくすべての細胞を元気にし、全身のバランスを整えることが栄養療法の目的です。それでもあえて各臓器にフォーカスして栄養療法を考える試みをしてみようと思います。各臓器の特徴や役割を理解し具合の悪いところに重点を置くことにより、効果の高い治療に結びつくと思うからです。トップバッターは心臓です。
心臓は私たちが寝ている時も起きている時も24時間365日働き続けています。心臓にとって重要なのは持続的に効率よくエネルギーを産生することです。そのために心筋細胞には通常の細胞よりも多くのミトコンドリアが存在しています。
ミトコンドリアは糖や脂質からエネルギー(ATP)を効率良く作り出す装置です。コエンザイムQ10はその装置の重要な部分に組み込まれています。
エネルギーがたくさん作られるところには常に活性酸素が発生しています。コエンザイムQ10は活性酸素を消去する役割も持っています。
コエンザイムQ10は体内で合成できますが、高血圧などで心筋が肥大している方やアスリートのように心臓の収縮をより必要とする方では相対的に不足する可能性があります。高齢者やコレステロールを下げる薬を飲んでいる方も注意が必要です。加齢によって合成量が低下しますし、コレステロールを下げるスタチン系の薬は、下図のようにコエンザイムQ10の合成経路も阻害して、産生量を減らしてしまうからです。

心臓の強力な味方コエンザイムQ10!それぞれの状態に応じて上手に補充しましょう。