2020年7月1日

新型コロナウイルスへの向き合い方



 皆さまお変わりありませんか。連日感染者数が報道される中、不安を覚えている方も多いと思います。完全に封じ込めることが難しい新型コロナウイルスです。未知のウイルスに対する怖さや不安はありますが、栄養医学はこれまで感染症と立ち向かってきたのと同じ態度で新型コロナウイルスにも立ち向かっていこうと考えています。今回はウイルスに出会っても感染しにくくするためのヒントをお伝えしていこうと思います。


 新型コロナウイルスの感染経路は粘膜です。粘膜につくウイルス量を減らすことが予防の目的になります。無症状者や発症前でも感染力を持つことがこのウイルスの厄介な点です。こまめな手洗いは眼・鼻・口の粘膜につくウイルス量を格段に減らします。空気中のウイルス量を減らすための換気や飛沫を出さないためのマスクも効果があります。家や職場での感染も増えています。特に会話時、食べる時、眼・鼻・口を触る前にウイルスリスクをチェックする習慣をつけましょう。
 さて、今回の本題はウイルスに遭遇した時に感染を防ぐ栄養学的な工夫です。ウイルスの感染を防ぐには大きく分けて三段階の防御システムがあります。一つは粘膜防御、次は好中球やマクロファージによる攻撃、3段目は抗体によるウイルス特異的な免疫です。それぞれに栄養の充足が大きく関わっています。


 ウイルスの侵入口である粘膜には粘液とIgA抗体による防御機構が備わっています。十分な厚みの粘液層があるとウイルスはそれを突き破って侵入することが出来ません。グルタミンやビタミン、亜鉛、動物性たんぱく質に多く含まれる含硫アミノ酸などが重要です。ウイルスの侵入直後から働くのが好中球やマクロファージです。ウイルスの種類を問わず働くことが出来ます。ビタミンは鉄などと反応して殺菌を行うほか、好中球の移動能力を向上させます。抗体の産生時にはリンパ球の一種であるB細胞が速やかに分裂成熟し抗体を産生することが必要です。遺伝子増幅や蛋白合成のため亜鉛やたんぱく質などの需要が高まります。


 免疫は体を守るだけではありません。新型コロナウイルス感染症の病状の急激な悪化にはサイトカインストームと呼ばれる免疫暴走が絡んでいます。免疫の制御や抗酸化・抗炎症に携わる栄養素も欠乏しないように気をつけましょう。


 規則正しい生活をして睡眠をしっかりとること、ジャンクフードを避けてたんぱく質や野菜を摂ること、日光を浴びたり適度な運動で筋肉をつけたりストレスを回避したりして健康的な状態を維持することなどは免疫が健全に働くための基本です。日常生活を快適に過ごしながら出来ることを地道に実行していきましょう。