2010年7月1日

栄養療法の嘘?本当?
-野菜ジュースと野菜-


調理や加工というのは驚く速さで進歩していますね。食事に時間をかけない人も増えていて「ドリンク型・ゼリー型・スティック型」の食品も盛んに開発されています。

「何が体に良いのか」を判定する根拠として栄養医学では大原則を決めています。

1.液体からはカロリーを摂らない

2.出来るだけ素材に近い食品を摂る(未加工のもの)

単に栄養バランスだけで判断してはいけないということになります。お子さんにスポーツドリンクを飲ませるのも「ちょっと考えて」欲しいのです。

「野菜ジュース」は飲んではいけない代表格です。「忙しくて野菜を摂る暇がないから野菜ジュースを欠かさず飲んでいます。」と野菜ジュースとおにぎりが定番になっている方いませんか?野菜ジュースと野菜は同じではありません。本来野菜は多くの糖質を含んでおりミキサーにかけることでその糖分の吸収はとても速くなります。多くの野菜ジュースは味を整えるため果物を配合しています。果物の糖分は血糖値を上げるだけでなくぶどう糖より酸化を起こしやすく内臓脂肪を増やしやすいことも知られています。菜ジュース生活がメタボリック症候群の原因になっているかもしれません。少なくとも糖尿病と機能性低血糖症は確実に悪化します。

特殊な状態を除いて「消化が良すぎるのは考えもの」です。食物繊維は不思議な働きを持っています。一緒に食べた糖質の吸収をゆっくりにしたり腸内細菌の状態をよくしたりすることが知られています。消化の悪い食物繊維が結構役に立っているのです。体は本来消化の悪いものが日常的に入ってくるように出来ています。バリバリとよく噛み、消化酵素をしっかりと出し、それでも消化しきれない食物繊維が腸を通っていくという大がかりな仕組みを使ってこそ野菜は体にとってよい食べ物になります。

やはり口から入るものには時間を惜しんではいけないようです。

 

ビタミンB群②
-生命活動に必要な補酵素とは?-

 前回、ビタミンB群は補酵素であり、補酵素がないと体の工場システムが止まってしまうという話をしました。ではビタミンB群はどのような生産ラインに関わっているのでしょうか?皆さん「エネルギー源は炭水化物と脂肪、体をつくるのはたんぱく質」と習いましたね。それだけでなく炭水化物と脂肪、たんぱく質は相互に入れ替わっています。ぶどう糖をエネルギーに変える途中にTCA回路(クエン酸回路)という代謝経路を通ります。そこはロータリーのようになっていて脂肪酸や特定のアミノ酸が出入り出来るようになっています。ぶどう糖が足りなくなればアミノ酸からぶどう糖をつくったり脂肪酸を分解してエネルギー源としたりすることが出来るのは、このようなロータリーが存在するためです。
 このTCA回路ではビタミンB群が大活躍しています。TCA回路の門番・ピルビン酸脱水素酵素の補酵素であるビタミンB1、ぶどう糖の新生に必須のアミノ酸転換酵素の補酵素B6、脂質との橋渡しをするCoAとなるパントテン酸などが代表例です。またエネルギーの受け渡しにはナイアシンを原料とするNAD(P)+/NAD(P)Hシステムが大切です。ビタミンB群は相互に助け合っており、代表例に挙げたビタミン以外でも1種類でも不足すると代謝経路全体が止まってしまうので補うのであれば全部補う必要があります。
 ビタミンB群は神経細胞の機能やDNARNAの合成・代謝などでも重要な役割を担っています。それはまた次回に譲ることにしましょう。

サプリメントはなぜ必要か
-栄養必要量の個人差-


今回は「分子整合栄養医学」の核心部分である「個人差」について触れようと思います。顔や背格好がひとりひとり違うように体の中の構造や酵素も一人一人違った姿形を持っていてそれらは遺伝的に決まっています。
たんぱく質はアミノ酸の鎖で出来ています。アミノ酸の種類と順番を決めているのは遺伝子です。遺伝子に小さな違いが起こることでたんぱく質のアミノ酸の種類や順番が変わり病気をもたらすことを最初に指摘したのはライナス・ポーリング博士でした。「鎌状赤血球症」という病気においてはヘモグロビンの一か所がグルタミン酸からバリンに変わっており、そのたったひとつの違いにより赤血球が三日月型に変形してしまうことを示したのです。

遺伝子やたんぱく質の解明が進むにつれ「致命的ではないけれども機能が少し低下するような」変化はほとんどの人に起こっていることがわかりました。たんぱく質だけでなくたんぱく質や細胞膜に結合する糖鎖なども遺伝子の影響を受けます。糖鎖の構造によって差が出るもので皆さんが知っている例にはABO式血液型などがありますが、血液型だけでなく全身の細胞やたんぱく質の構造と機能に微妙な影響を与えています。
酵素の働きには、酵素の構造補酵素との結び付きやすさ、材料(基質)との結び付きやすさが影響します。模式図のように補酵素との結合部位に差がある場合同じ機能を発揮するためには実に40倍の補酵素の濃度が必要になることもあります。

 


「分子整合」の意味は「細胞内や反応場所での濃度を必要なところまで上げて、体質の差を補うだけの十分な機能を実現する」ということです。体質によっては「食べ物」だけで必要な濃度を実現することは不可能です。そこでサプリメントの開発が行われたのです。
必要な栄養素の診断は、上のような根拠を基に検査のデータを積み重ねて行っています。なぜ血液検査で体質がわかるのかはまたいずれ機会があれば取り上げてみたいと思います。

 「至適量を少し超える量を投与して、あとは体にまかせればよい」
ライナス・ポーリング