今回は「分子整合栄養医学」の核心部分である「個人差」について触れようと思います。顔や背格好がひとりひとり違うように体の中の構造や酵素も一人一人違った姿形を持っていてそれらは遺伝的に決まっています。
たんぱく質はアミノ酸の鎖で出来ています。アミノ酸の種類と順番を決めているのは遺伝子です。遺伝子に小さな違いが起こることでたんぱく質のアミノ酸の種類や順番が変わり病気をもたらすことを最初に指摘したのはライナス・ポーリング博士でした。「鎌状赤血球症」という病気においてはヘモグロビンの一か所がグルタミン酸からバリンに変わっており、そのたったひとつの違いにより赤血球が三日月型に変形してしまうことを示したのです。
遺伝子やたんぱく質の解明が進むにつれ「致命的ではないけれども機能が少し低下するような」変化はほとんどの人に起こっていることがわかりました。たんぱく質だけでなくたんぱく質や細胞膜に結合する糖鎖なども遺伝子の影響を受けます。糖鎖の構造によって差が出るもので皆さんが知っている例にはABO式血液型などがありますが、血液型だけでなく全身の細胞やたんぱく質の構造と機能に微妙な影響を与えています。
酵素の働きには、①酵素の構造②補酵素との結び付きやすさ、③材料(基質)との結び付きやすさが影響します。模式図のように②補酵素との結合部位に差がある場合同じ機能を発揮するためには実に40倍の補酵素の濃度が必要になることもあります。