2013年6月10日

血液検査の読み方
-あなたの肝臓は壊れている!?-


検診の結果を見ると、肝機能、腎機能、糖や脂質代謝と便宜的に分類されています。肝臓関係の数値が高いと「肝機能が悪いですね」という言い方もします。それぞれの項目がどういう意味を持っているか、興味がありますよね。

 


肝機能の欄のAST(GOT)ALT(GPT)は別名「肝逸脱酵素」と言います。肝臓の細胞が壊れた時に細胞から外に漏れ出す酵素という意味です。ということは、この二つの数値が高い時には肝臓の細胞が壊れています!

肝臓の病気にはウイルス感染によるものや自己免疫疾患など多数ありますが、検診で見つかる大多数は脂肪肝です。「脂肪肝はたいしたことはない」と思っていると大変なことになります。だって細胞が壊れているのですから。

脂肪肝では、エネルギーを産生する代謝が滞っています。滞って溜まった脂質が過酸化状態になります。過酸化には活性酸素が関係しています。特にALTが高い場合、炎症や細胞の壊れ方が強くNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)という状態になり肝硬変や肝がんに進むこともあります。

ASTALTの上昇は肝臓の細胞が壊れているサイン!

脂肪肝をあなどるべからず。

暮らしに役立つ栄養療法
-胆汁酸と食物繊維-


胆汁には消化酵素ではなくミセルを作って脂質の吸収を助ける胆汁酸という物質が含まれています。胆汁酸は肝臓でコレステロールから作られ、胆のうから腸管に分泌され、また再吸収されます。食事の中に食物繊維がたくさん含まれていると、胆汁酸と食物繊維が結びついて吸収されずに排泄されます。排泄された分の胆汁酸はまたコレステロールから作られますので、結果的に余分なコレステロールを腸に排泄していることになります。

 


食物繊維はよい腸内細菌を増やすのにも役立っています。食物繊維が少なく糖質の多い食生活を続けているとヒトに有用な腸内細菌の割合が減り、有害な腸内細菌の割合が増えてきます。肝臓で合成される胆汁酸はコール酸、ケノデオキシコール酸で一次胆汁酸と呼ばれています。この一次胆汁酸から腸内細菌によって作られる二次胆汁酸の種類は、菌の種類によって異なります。

クロストリジウム属のある菌種が作り出すデオキシコール酸、リトコール酸などは、肝臓や大腸に有害という報告が多数出てきました。したがって腸内細菌を改善することが本当に病気を予防に結びつくのですね。腸内細菌を整えるためにも食物繊維をたっぷり摂りましょう。

病気はなぜ起こる?
-肺の炎症と病気③「肺気腫」-


今回は肺気腫について取り上げます。肺は酸素や二酸化炭素などのガスの交換を行う場所ですね。ガス交換が効率よく行われるように気道の先端はぶどうの房のようになっていて(肺胞と呼びます)血液と接する面積を増やしています。図の中で部屋の仕切りのように見えているところに血液が流れています。肺気腫ではこの仕切りが炎症によって壊れて大きな空間が出来ています。ここでは空気があってもガス交換を行うことが出来ません(図1)。

 


ここまで壊れてしまうと、もとにもどすのは難しいので早めの発見が大切です。

風邪でもないのに咳や痰が長引いたら肺気腫を疑いましょう。坂や階段で息切れがした時には結構進んでいます。

肺気腫の早期発見には呼吸機能検査が簡単で有効です。肺活量は減っていないのに一秒率が低くなっているのが特徴です(図2)。空気を吐くときに気道がつぶれてしまうので吐くのに時間がかかるからです。

 


「肺気腫になったら治らない」と悲観せずに早め早めに手を打ちましょう。まず大切なのが禁煙です。喫煙は炎症を起こして活性酸素を発生させ肺を壊す一番の原因になります。

症状がある場合には気道を広げる吸入薬、血液中の酸素が減る場合には在宅酸素療法を用いれば長く元気に暮らすことが出来ます。苦しいのを我慢していると心臓に負担がかかるので我慢は禁物です。

肺気腫になって痩せてきた方はカロリーが不足しています。じっとしていても呼吸にたくさんのカロリーを使っています。筋肉を壊してカロリーに変えてしまうのでたんぱく質とカロリーの両方を補いましょう。ビタミンCは感染予防と炎症改善に有効です。炎症が起きても活性酸素をすぐに消すことが出来れば肺への影響を最小限に出来ます。

禁煙と栄養摂取を実践し、薬や酸素を上手に使って病気でも元気に楽しく生活しましょう。