2014年4月1日

検査値のここに注目!
-肝機能項目-
低ければよいと思っていませんか?


検診で「肝機能」と呼ばれているASTALTγGTPALPなどは肝臓や胆管に炎症があったり細胞が壊れていたりする時に高くなります。ですから肝臓の病気を発見し、壊れている原因を調べて早く取り除くことに役立ちます。ですが・・・これらの数値が高いことと肝臓の働きは無関係です「代謝が滞っていたり、今後細胞の数が減るかもしれないから気をつけなさいよ」ということです。肝臓の合成や解毒の働きが本当に低下している時は、肝臓の細胞はすでにかなり減ってしまっています。

一方、これらの数値が低い時には注意が払われていないように思います。例えばALTの基準値は545(検査機関によって若干の違いあり)と、かなり幅があります。肝臓に炎症がなければ、血液中の量は細胞内の酵素の量を反映しています。数値が低い時は、細胞の中の酵素の量が減っているので働きが低下しています

酵素の減少の一番多い原因は栄養欠乏-特にたんぱく質と補酵素の欠乏です。例えばALTの補酵素であるビタミンB6が欠乏すると不完全な酵素(アポ酵素)のまま活性を持てず、寿命がとても短くなるので量も働きも減ってしまいます。

 


ビタミンB6はアミノ酸を入れ替えたり糖質の分解と新生を切り替えたりするのに大切な補酵素です。基準値内だから、低いからといって安心していると思わぬところで不調になります。病気の発見だけでなく予防にも検査値を役立てましょう。

初歩から学ぶ体の仕組み
エネルギー産生工場
生命の鎖・ビタミンB群


エネルギー産生の仕組みは、製造工場に似ています。工場では供給された材料がベルトコンベアーなどでそれぞれの製造・加工ラインを通過し製品となって出てきます。


製造・加工機械にあたるのが酵素です。酵素はたんぱく質とビタミンやミネラルで構成されています。ベルトコンベアーの代わりに酵素が隣接し、効率よく次へ材料を受け渡しています。エネルギー産生回路にはぶどう糖、アミノ酸、脂肪酸といった複数の材料供給口があります。

図に小さく書かれているのが、反応に必要な補酵素です。補酵素が不足すると反応がそこでストップし、製造工程全体が滞ってしまいます。ビタミンB群の一つ、パントテン酸の発見者である故ロジャー・ウイリアムス博士は、著書の中で、「栄養素は一つのチームとして働く。必須栄養素は鎖で出来た首飾りのようなものだ」と言っています。どこか一か所でも細いところがあると、生命の鎖は切れてしまうのです。

みんなは一人のために、一人はみんなのために


ミュージカル「ユタと不思議な仲間たち」で歌われる「友だちはいいもんだ」の一節です。みんなのために働くのは人と人との間だけではありません。実は体の中の栄養素も他の栄養素のために働いています。

栄養素にはそれぞれ固有の、しかも複数の働きがあります。でもほとんどの場合単独では働くことが出来ません。
 
・ひとつの働き(化学反応)において複数の栄養素が働いています
 →ひとつでも足りない栄養素があると、反応が起きません

・ひとつの栄養素は複数の役割を持っています
 →ひとつの栄養素の欠乏によって複数の反応が低下します

・栄養素の活性化にはほかの栄養素が必要です
 →活性化出来なければ、栄養素があっても働けません


食べ物には必ず複数の栄養素が入っていますね。加工や精製によって栄養素は失われます。出来るだけ生の状態に近いまま、まるごと食べることが出来れば理想的です。特定の抽出された成分を多く摂って効果を出すということも大切ですが、それを助ける他の栄養素が不足していると十分な効果を発揮できません。ですから、栄養素の効果を期待する時には常に一緒に働く他の栄養素にも気を配る必要があります。

栄養療法で使用するサプリメントには、一緒に働く栄養素が出来るだけ含まれるように工夫がしてあります。例えばビタミンB群のサプリメントにはビタミンB群全部を入れるだけでなく核酸を入れたり、ヘム鉄や亜鉛のサプリメントには他の微量ミネラルを含ませたりしています。

冒頭のタイトルにもどって・・・
人にもそれぞれ固有の役割があります。優れているとか人よりうまく出来るとかとは関係なく、あなたがいることで社会が成り立っています。そして私も日々誰かに助けられて存在しているのだと思います。