2015年8月1日

カンジダの増殖を検出
―尿中有機酸検査 「イーストと真菌マーカー」


腸内カンジダがどの程度増えているのか調べることは出来るのでしょうか?血液中のカンジダ抗体や便検査は、その時々のカンジダの量を反映しません。そこで登場するのが尿中有機酸検査です。尿中有機検査「イーストと真菌マーカー」ではカンジダや真菌が産生する物質を測定します。カンジダが産生する代表選手であるアラビノースについて詳しく見てみましょう。

アラビノースはカンジダが持つヒアルロニダーゼによってヒアルロン酸から産生されます。産生されたアラビノースは腸壁から体内に入り血液中を回って尿に排出されます(下図)。ヒトはアラビノースを産生することが出来ませんので、尿中に検出されたアラビノースは腸のカンジダによって産生されたと解釈できます(アラビノースはりんごやぶどうにも含まれているので検査前にはこれらの果物を食べないようにします)。

カンジダが増えればアラビノースも増え、カンジダが減ればアラビノースも減ります。そのため、リアルタイムにカンジダの増殖や治療効果を知ることが出来ます。また、アラビノース以外には酒石酸シュウ酸もカンジダや酵母・真菌増殖のよいマーカーになります。

尿中の有機酸検査はカンジダの増殖以外にも、神経伝達物質の変換やエネルギー代謝がきちんと働いているかなどたくさんの情報を得ることが出来る優れた検査です。後日また説明する機会を得たいと思います。

カンジダを増やす要因


カンジダが増える要因には次のようなものがあります

1.  酵母(パン酵母など)を多く含んだ食品の摂取

2.  糖質が多く食物繊維の少ない食事

3.  有機水銀(メチル水銀)

 
1. 酵母(パン酵母など)を多く含んだ食品の摂取
  腸内細菌は群れを形成し勢力争いをしています。カンジダは酵母の仲間であるため、酵母を多く摂取するとカンジダの勢いが増すことがあります。


2.糖質が多く、食物繊維の少ない食事
  カンジダの増殖には食事も大きく影響します。カンジダは糖質が大好きです。一方、善玉の腸内細菌は食物繊維などを餌にして増えます。外食や加工食品は糖質が多く、食物繊維が少ないので注意が必要です。月経前に糖質が欲しくなる方や甘い物への欲求が強い方は、カンジダが糖を欲しがっている可能性があります。カンジダ増殖に早く気付いて対処することが大切です。

3.有機水銀(メチル水銀)
  カンジダは消化管に排泄された水銀を細胞壁に取り込む性質があり、細胞壁の水銀が満杯になるとメチル水銀として腸内に放出します。メチル水銀は白血球の細胞内殺菌能力を低下させて、カンジダへの抵抗力を弱めます。
  また、歯科治療によりアマルガムが歯に入っていると水銀蓄積の原因となることがあります。アマルガム除去専門の歯科医に相談しましょう。

 

腸内カンジダ増殖と様々な疾患

  今回は、腸内のカンジダの増殖の影響に注目します。これまで取り上げてきた機能性低血糖症リーキーガット症候群(LGS)副腎疲労症候群など様々な病気の背景には、このカンジダ増殖が隠れていることがあります。食事を変えたりサプリメントなどで栄養をとったりしてもなかなか良くならない方は、カンジダの増殖が改善を妨げていないか一度検討してみる必要があるでしょう。

カンジダは腸の常在真菌の一つで、誰にでも存在しています。健全な腸ではカンジダの割合は少なく、特に悪い作用を起こしません。ところが抗生物質の服用によって良い菌が死んでしまったり、免疫力が一時的に低下したりするとカンジダが急激に増えることがあり、次のような有害作用が表に出てきます。

l  消化管粘膜の表面構造を分解する酵素を産生する

l  免疫系に毒性のある物質を生成する

l  ヒトの分子と似た構造を持つため自己免疫疾患の原因となる

l  カンジダの細胞壁のたんぱく質がグルテンに似ていて、グルテンアレルギーを惹起する

カンジダは免疫系に毒性のある物質を産生するため、カンジダが増殖すると免疫系が抑制されて更にカンジダが増えるという悪循環になります。そしてカンジダの産生する酵素が消化管粘膜を破壊し、リーキーガット症候群の原因となってしまうのです。

抗生物質は肺炎による死亡率を減らすなど多くの恩恵をもたらしてきましたが、本当に必要な時以外にも使っていないでしょうか?抗生物質は、腸の善玉菌をもやっつけてしまいます。通常は服用後すぐに善玉菌が勢力を盛り返すのですが、善玉菌を増やす食物繊維がなかったり、カンジダの勢いが強かったりした場合には勢力図が変わってしまいます。子供が中耳炎の治療をきっかけにおかしな行動をしたり、女性が抗生物質を飲んだ後に膣炎になったりした場合にはカンジダ増殖を疑う必要があります。

腸は免疫系や脳とつながっています。カンジダをきちんとコントロールして腸の状態を整えることがあらゆる治療の基本です。