今回は機能性低血糖症について取り上げます。機能性低血糖症は「精神症状や自律神経症状を伴う血糖調節異常」のことです。眠気や頭痛などの症状も含めれば、潜在的に機能性低血糖症を持っている方の人数はかなり多いのではないかと思います。
機能性低血糖症の症状は多彩です。
l 食直後または数時間後の耐えがたい眠気
l 動悸や冷や汗・息苦しさなどの身体症状
l 眼のチカチカや頭痛
l イライラ感・爆発的な怒り
l 不安感や気分の落ち込み
l 不眠・朝起きられない・だるい
思考力の低下や記憶力の低下も多く見られる症状の一つです。「判断が出来ず能力が低下した感じがする」「記憶力が悪くなった」と思ったら可能性を疑いましょう。機能性低血糖症は他の疾患と間違われやすい疾患です。例えば、動悸と息苦しさが強く不安感に襲われて救急車で病院に行ったけれども検査で異常がなくパニック障害と診断されたり、不眠やだるさからうつ病と診断されたりします。
「検査で異常がないから心療内科に行きなさい」と言われた時は、心療内科に行く前にぜひ低血糖症の検査をしましょう。
測定した血糖値が低くなくても機能性低血糖症である可能性があります。ですから、きちんと5時間糖負荷試験*註1で血糖やインスリン変動パターンなどを見るようにしましょう。機能性低血糖症に熟練した医師が見れば、「異常がない」と言われた検査結果の数値にも徴候が出ていることがありますから、これまでの検査結果もぜひ持っていくとよいでしょう。
また、同じ血糖値の変動パターンでも症状が出やすい方と出にくい方がいます。機能性低血糖症は単に糖質摂取と血糖変動だけの問題ではなく、血糖調節に関わる栄養素や腸の状態、ホルモンバランスやホルモン分泌予備力が大きく関わる複合的な病気です。治療は食事を中心に実施しますが、画一的な治療ではなく一人一人の体の状態に合わせた細かい工夫が大切です。
註1:5時間糖負荷試験とは、75gのブドウ糖液を飲んだ後、血糖値とインスリン、体温を5時間にわたって測定する検査のことです。詳しくはオフィスひめの通信47号もご覧下さい。