2024年4月1日

腸の畑を育てよう

 腸には消化、吸収以外に、ビタミンなどの合成、有害物質の排泄、免疫調節、腸脳相関など様々な働きを持っています。腸を整えることは神経機能や代謝、免疫においても大切です。


 例えば、今年は早くからスギ花粉が飛び花粉症が憂鬱だという方もいらっしゃるでしょう。免疫は花粉症やアトピーのようなアレルギー、異物などを攻撃する免疫反応、免疫を起こさないようにする免疫寛容のシステムなどがバランスを取っています。腸内細菌は消化管粘膜下にある免疫司令塔に影響を与えています。花粉症を改善する乳酸菌が研究されているのはそのためです。


 ストレスや悪い食習慣などは有害な細菌を増やします。有害な菌の一部はβグルクロニダーゼという酵素を産生し、肝臓が折角無毒化して排泄した物質を、再度有害な形に戻し再吸収させてしまうことがあります。


 共生細菌は有用な物質を合成する役割も持っています。例えば、ナイアシン、ビタミンB6や葉酸、ビタミンB12、短鎖脂肪酸(プロピオン酸、酪酸、吉草酸)、乳酸を合成してくれます。短鎖脂肪酸は大腸の上皮細胞の増殖や粘液の分泌を促し、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源となる物質です。その他、腸内を弱酸性の環境にして有害な菌の増殖を抑制したり、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進したり、ヒトの免疫反応を制御したりしてくれます。


 マイクロバイオミーという検査は便中の遺伝子を増幅して調べます。各種の腸内細菌の多寡の他、腸内細菌が持つビタミンや短鎖脂肪酸を作る能力、有害菌による腸バリアや免疫、脳への悪影響の程度なども示してくれます。


 マイクロバイオミーのレポートの面白い点は、足りない善玉菌を増やすためにはどのような食品を摂ったらよいのかとか、実際にヨーグルトやサプリメントに入っている菌について、不足しているかどうかを教えてくれる点です。 我々医師は増えている有害な菌を見て対策を立てることが出来ます。腸活!と言っても具体的に何を摂ったらよいかわからない方は検査を検討してみてはいかがでしょうか。