脂溶性ビタミンほど、多彩で有効な働きを持ちながら不遇だったビタミンはないと思います。例えばビタミンA! -教科書を見るとビタミンA過剰症の害について必ず書かれています。その症状とは昔探検隊が『北極ぐまの肝臓を食べた』結果起きた症状が根拠になっています。以後、多量(と考えられている)ビタミンAを摂取する人は長らくいませんでした。1996年以降にオスローの研究グループが北極ぐまの肝臓から「内分泌撹乱物質」を発見し、ビタミンAの副作用と考えられていた症状が別の物質によるものではないかと考えられるようになっています。
脂溶性ビタミンには、他にビタミンD,
E, Kなどが含まれます。これらのビタミンは細胞膜を簡単に通り抜けることが出来、遺伝子に直接働きかけます。これまで知られていた網膜への作用(ビタミンA)、骨への作用(ビタミンD)、凝固因子を助ける働き(ビタミンK)以外に、遺伝子の発現調節による免疫調節やホルモン調節、癌抑制など新しい働きが次々と見つかっています。
遺伝子に直接働きかける物質の安全性を確保するためには「活性型」と「非活性型」という考え方が大変重要です。常に信号が『オン』になっていたら危ないのです。ある時には『オン』ある時にはきちんと『オフ』になることが大切で、自然界のビタミンでは「活性型」と「非活性型」の変換調節がかなり厳密に行われています。
薬は「常に活性型のものを作って入れる」ことが多く、そこでは様々な問題が生じます。何が安全で何か危険なのかを見極めたうえで、脂溶性ビタミンの効果を最大限に享受する工夫が求められています。
クルードな(精製・加工していない)プレカーサー(活性化前の形)を摂り、あとは体に任せる
分子整合栄養医学の基本的考え方