2015年4月1日

リーキーガット症候群
-慢性のストレスが腸のバリアを崩壊させる-

 今回はリーキーガット症例群について解説をします。日本語に直訳すると「腸漏れ症候群」です。腸の隙間から物質が漏れて入り込むことにより起きる病気の総称です。

腸はとても不思議な場所です。消化管の内腔はまだ体の外! 外界と体内を隔てる腸の境界部分では体に必要な栄養素と害になる物質を振り分けて必要なものだけ吸収する機構が備わっています。分厚いムチン層(粘液層)のバリアと細胞と細胞の隙間を埋めるタイトジャンクションが物質のすり抜けを防ぎます。栄養素は栄養素専用の経路から、腸内細菌や侵入してきた細菌の菌体や毒素などはM細胞などの特殊な免疫系の経路から体内に取り込まれます。腸の粘膜下組織には免疫の司令部があります。特に大人では司令部のほとんどが腸に存在しています。これらの免疫組織は、腸に共生している腸内細菌と連絡をとりあって免疫を制御しています。

腸の働きには、消化吸収のほかに、バリア機構、免疫への指令、脳や神経との相互連絡があるのです。

 


さて、バリアが破綻すると本来の経路以外から物質が入り込みます。未消化ペプチドが入って脳の指令を撹乱したり、未消化のたんぱく質が免疫反応の原因となったり(IgG型食物アレルギー)、細菌の毒素や菌体が血中に入り込んだりします。小さな物質も本来より更に容易に入るようになり、血糖値の急激な上昇による機能性低血糖症などの原因になります。

バリアの破綻にはいくつか原因があります。

l グルタミンやビタミンA,ビタミンB群などの栄養欠乏・・・手術後の絶食時などにも

l アルコールによる透過性亢進・・・飲み過ぎは腸にも影響

l 腸内細菌叢の乱れ・・・カンジダや有害細菌の増加

l ストレスによる視床下部下垂体副腎、腸壁神経系を介した影響

バリアを回復させるためには、先ず栄養素の摂取と腸内細菌叢の改善を心掛けましょう。それでも思うような結果が得られない時には、ストレス要因を検討しましょう。ストレスは腸に影響し、腸は脳や自律神経に影響します。こうした負のスパイラルに陥ると頑張っても成果が得られず、かえってストレスになってしまうこともあります。体の声を良く聴いてリラックスすることそれが健康への近道です。