2015年4月1日

腸内細菌と腸管免疫


免疫細胞は骨髄や脾臓、全身のリンパ節などを基地としてそれをつなぐリンパ管を移動し全身のパトロールをしています。免疫細胞には「これは排除しなさい」とか「攻撃してはダメだよ」と教育したり指示を出したりする教育機関があります。子供の時期の教育機関は主に胸腺(心臓のすぐ上あたりにあります)が担っていますが、大人になるころまでには痕跡程度に小さくなってしまい、その代わりに腸の粘膜下組織にある腸管免疫系が働きだします。腸管免疫系は共生している腸内細菌と常に交信し影響を受けています。

腸内細菌がどのように生体防御に関わっているかというと

l  ヒトに有用な菌が自分の縄張りを維持することにより病原菌の侵入を防ぐ

l  上皮細胞に働きかけてムチンを分泌させ粘液層の強化をする

l  体内にとりこまれて免疫細胞に作用し情報を伝達する

l  腸管内に分泌されるIgA抗体の産生に関与する

など様々な働きがあります。腸管細胞のM細胞という特殊な形の細胞は菌体の一部や腸内の物質を選択して取り込み、樹状細胞に情報を伝達しています。樹状細胞の情報はさらに複数のT細胞に伝えられ、みんなで相談しながら「攻撃しないよう」指令をだしたり、アレルギー型の反応や細胞破壊攻撃の指令を出したりしています。

 


腸管内に分泌されるIgA抗体は腸内に侵入する異物の攻撃や有用・有害腸内細菌の選別に関わっている大事な抗体です。IgA抗体の分泌にはビタミンAからつくられるレチノイン酸が大変重要な働きを担っています。レチノイン酸は全身を旅する免疫細胞が再び腸管に戻ってくるホーミングという現象にも関わっています。

このように腸内細菌と私たち人間は共存関係にあります。今後もまだまだ腸内細菌の新しい役割が解明されていくことでしょう。