2023年9月1日

ビタミンKの話

  今回はビタミンKの話です。ビタミンKは脂溶性ビタミンの一つで植物によって作られるビタミンK1(フィロキノン)と微生物によって作られるビタミンK2(メナキノン、MK-n)があります。nは側鎖の長さを示す数字です。卵や鶏肉など動物性食品にはMK-4が多く含まれ納豆にはMK-7が多く含まれます。ビタミンKの効果は1929年血液凝固を正常に維持するビタミンとして発見されました。凝固因子(血液を固めて出血を止める因子)は肝臓で作られ、そのうち、第IIVIIIXX因子とプロテインC,プロテインSが合成のためにビタミンKを必要とします。ワーファリンはビタミンK依存性の酵素(ビタミンK依存性エポキシドレダクターゼとビタミンKキノンレダクターゼ)を強く阻害し、凝固因子の凝固活性をなくすことによって血栓形成を予防するお薬です。


 その後、骨粗鬆症を予防する機能や動脈石灰化を防止する機能が発見されました。骨代謝に関わるオステオカルシンや、骨と血管に存在するマトリックス蛋白はビタミンKを必要とするたんぱく質です。オステオカルシンは骨形成を活発にするだけでなく膵臓のインスリン分泌や脂肪細胞のアディポネクチンにも関わっているというデータが出てきました。マトリックスGla蛋白は動脈の石灰化を予防する働きが知られています。


 ビタミンKはこれらのたんぱく質のグルタミン酸がγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)に変える反応の補酵素として必要です。ビタミンKが不足すると、グルタミン酸がGlaになれずにたんぱく質が働けません。骨粗鬆症マーカーのucOC(カルボキシル化していないオステオカルシン)はビタミンK不足を示すマーカーです。


 体内で活性化されたビタミンKが脳神経細胞を酸化ストレスから防いだり遺伝子発現に関わったりなど、骨や血管弾力維持以外のビタミンKの新たな作用の研究が進んでいます。ビタミンKのさらなる可能性が期待されます。