2023年9月1日

健康寿命の延伸

  厚生労働省の発表によると寿命は年々伸びて2020年の日本人の平均寿命は男性が8156歳、女性が87.71歳となっています。しかし、平均寿命と健康寿命の推移をみると、男性では9歳程度、女性では12歳程度の差がありその差は縮まっていません。健康寿命とは自立して生活が出来る期間のこと、他人の手を借りるのは決して悪いことではありませんが、人生の最後の10年もの間足腰が弱って寝たきりになったり認知機能が低下して一人で生活することが難しくなったりするのは残念なことです。


 抗加齢医学の分野では、早い老化は病気であり予防できるという考え方が主流になってきています。細胞老化の原因には糖化、酸化、炎症など色々ありますが傷ついた細胞ががん化しないように細胞分裂を停止するシステムがあることがわかっています。このような細胞は老化細胞と呼ばれ通常ならアポトーシスで自死したり免疫細胞によって除去されたりします。ストレスが積み重なったリ栄養が欠乏したりして体の機能が低下すると老化細胞が除去されずに臓器に蓄積し、サイトカインを出すようになります。サイトカインは慢性炎症を誘発してさらに老化が進みます。


 心筋細胞や神経細胞のように細胞が入れ替わらない組織において、細胞を新品に保つシステムにオートファジーがあります。オートファジーは細胞内のたんぱく質や消化器官を膜で包んで消化分解し、新たにたんぱく質を合成するリサイクルシステムのことです。オートファジーの活性化には、栄養を入れるタイミング、絶食するタイミングが重要のようです。個々の体の状態にもよりますが、朝はたんぱく質などの栄養をしっかり摂り、午前中に運動し、夕食は早め軽めにすませて、そこからしっかりと空腹時間をつくります。


 空腹時間が長くなると、脂肪をエネルギー源とするケトン体モードになります。ケトン体モードはサーチュイン遺伝子の活性化に役立ちます。サーチュイン遺伝子活性化によって作られたたんぱく質は遺伝子の修復や細胞をストレスから守る作用などがあり、抗老化に関係すると考えられています。サーチュイン遺伝子活性化は眠りの質にも関係します。


 高齢女性にとって骨粗鬆症は寝たきりリスクを増やす大きな要因です。特に大腿骨頭周辺は骨粗鬆症の変化が急激に起きやすく、骨折をしたあとの影響が強いので注意が必要です。たんぱく質、カルシウム、マグネシウム、ビタミンDK摂取と適切な運動によって予防を心がけましょう。骨粗鬆症の治療薬も多彩になっています。適切なタイミングで骨折を予防できるよう骨密度や骨代謝マーカーを使った定期健診を受けましょう。


 QOLを低下させる動脈硬化、認知症、骨粗鬆症など自分特有のリスクを見極めて健康寿命を延伸しましょう。