2012年7月1日

病気はなぜ起こる?
-動脈硬化の成り立ち-


今回は活性酸素と動脈硬化の関係についてみてみましょう。

傷が出来るとあっという間に血液が固まって出血が止まります。一方、血管内で血栓がどんどん出来たら大変ですね。正常な血小板と血管内皮細胞(血流に接している細胞)の間では血栓を作る働きと血栓を予防したり溶かしたりする力がほぼ拮抗して大きな血栓が出来ないようになっています。血栓が出来て血管が詰まる時はこの拮抗が破られた時! 多くは何らかの傷が原因となることが多いのです。

少し前までは、血液中のコレステロールが高いと動脈の内膜にコレステロールがたまって動脈硬化が起こるという考え方が主流でした。したがって動脈硬化の予防もコレステロールを下げることに主眼が置かれていました。ところが正常なコレステロールは内皮細胞をすり抜けて動脈壁にたまることはありません。動脈硬化が起こるにはリポ蛋白(コレステロール運搬体)が変形して性質が変わっていること、血管内皮細胞がはがれたり傷ついたりして機能が低下していることが条件となります。

 


リポ蛋白を変形させたり、内皮細胞を傷つけたりする最も大きな要因は何でしょう? 活性酸素ですね。したがって動脈硬化予防の第一戦略は活性酸素を消去することです。

動脈硬化の予防には内皮細胞の細胞膜の性質も大切です。血小板からは凝集を促進するトロンボキサンA2という物質が出ます。トロンボキサンA2は細胞膜にあるアラキドン酸という脂肪鎖から必要に応じて瞬時に合成されます。一方血管の内皮細胞からは血液凝固を防ぐプロスタグランジンI2という物質が出ます。面白いことにプロスタグランジンI2もアラキドン酸から出来ます。細胞膜にEPAという脂質の割合が多いとトロンボキサンA2の代わりにトロンボキサンA3が、プロスタグランジンI2の代わりにプロスタグランジンI3が出来ます。トロンボキサンA3は血液凝固作用が弱いので血栓が出来にくい状態を作り出すことが出来るのです。動脈硬化予防の第二の戦略は細胞膜の脂質組成を変えること、具体的にはEPAなどのω3の脂質の摂取量を増やすことが大切です。

抗酸化ビタミンとω3系の脂質で皆さんもぜひ健康長寿を目指してください。