自己免疫疾患は間違えて自分を攻撃してしまう病気のことです。でも通常の状態では自分を攻撃しないってとても不思議だと思いませんか?というのも抗体はランダム合成戦略を採用しているので自分の体に反応する抗体も出来てしまうからです。
免疫は外から来たものや自分ではないものを排除する仕組みですから、初めて出会ったもの=未知のものも排除出来ないといけません。そこで採用したのが抗体をランダムに合成する戦略です。とにかく多種多様なものを準備しておけばどれかはピッタリはまるだろうという理屈です。当然、自分に反応する抗体も出来てしまいます。そこでまず自分に反応する抗体産生細胞は取り除こうという機構が働きます。死滅の指令(アポトーシス機構)です。この主役となるのは胸腺と言う組織です。
アポトーシス機構だけでは除ききれない細胞もありますので二重三重の防衛機構を準備しています。その一つが免疫寛容。免疫寛容は攻撃しないように指令を出す仕組みです。免疫には司令塔が存在し全身の免疫反応を制御しています。幼い時は胸腺が主に活動していますが十代で活動のピークを迎えた後小さくなって消えてしまいます。そこで新たな司令塔として活躍するのが腸管免疫です。
免疫では抗原が来たことを伝える伝令係、攻撃の司令係、実戦部隊などの連係プレーによって成り立っています。攻撃しないように指示する要の細胞は制御性T細胞(Treg)と呼ばれていて免疫寛容に重要です。攻撃の司令官としてはTh1、Th2、Th17などのヘルパーT細胞があり、それぞれ特徴をもった攻撃指令を出します(上図)。腸管には常に外から食べ物や病原菌、毒素などが入ってきます。また腸内細菌が共存しています。体内に入れてよいもの、共存するものと排除するものを選別するシステムが発達しているのは合理的なことです。特に排除しないシステム(免疫寛容)こそが腸管免疫の役割と言ってもよいぐらいです。
腸内細菌が乱れたり、病原菌の割合が増えたりすると攻撃指令官同士のバランスや制御性細胞(Treg)との力関係が変わり、本来体に必要なはずの免疫が病気としての症状を起こすようになります。次回は免疫バランスと病気、そして腸内細菌のかかわりについてもう少し詳しく見てみましょう。