ホルモンには二種類(細胞膜を通るものと細胞膜を通れないもの)があるという話を覚えていますか?副腎皮質ホルモンや性ホルモン、甲状腺ホルモンなどは細胞膜を簡単に通り抜け、遺伝子が収納されている核内の受容体と結合して直接遺伝子に働きかけます。
ビタミンAやビタミンDも核内の受容体に結合して遺伝子に働きかけることが出来ます。脂溶性ビタミンがホルモンのような働きをすることはビタミンの概念を変える大きな発見でした!
ビタミンDの古典的な役割は
①
腸管でのカルシウムマグネシウム、リン吸収の促進。
②
腎臓からのカルシウム喪失抑制と、副甲状腺を介した、血中カルシウム濃度の維持。
③
骨形成や骨のカルシウム、マグネシウムの吸収の円滑化。
です。そこに最近分かった機能のリストが加わりました。
①
細胞分化誘導・発がん抑制
②
免疫担当細胞の調整(花粉症・アレルギー・自己免疫疾患の改善)
③
血圧上昇ホルモンの分泌調整(レニンを抑制)
骨に関しても単にカルシウムの吸収をよくするだけではなく骨のリモデリングに関わる細胞を直接活性化して骨を強化する働きがあることもわかりました。
そこで新しく発見された機能を十分果たすために必要なビタミンDの量はどのくらいか?という問題が浮上します。骨が大丈夫でも細胞の分化やアレルギー調節には足りていない可能性があります。活性化前段階の25(OH)ビタミンD濃度を測った研究からは日本人の70-80%がビタミンD不足だったそうです(なお25(OH)ビタミンD濃度は健康保険が使用できないため特殊な自費検査の扱いになります)。
過剰な免疫反応を抑える働きがあるビタミンDは、最近増えてきたアレルギー疾患の救世主となるかも知れません。また昼夜逆転や室内の仕事で紫外線に当たる時間が極端に少ない方はぜひライフスタイルを見直せるとよいですね(紫外線とビタミンDの関係は前号をご覧ください。