2013年5月9日

病気はなぜ起こる?
-肺の炎症と病気②-


肺の炎症シリーズの2回目の今回はアレルギー性の炎症を特徴とした気管支喘息についてお話ししようと思います。

 体にとって異物を排除する炎症反応はとても大切なものです。問題なのは炎症が肺や気管支に起きた場合、咳や痰、呼吸困難といった症状や酸素不足に直結することです。アレルギー反応は刺激が少量でも気管支を狭めたり粘液の分泌を促進したりして強い呼吸困難を 起こしてしまいます。

気管支喘息の症状が起きる仕組みを見てみましょう。アレルギーの原因物質が気道に入ると、気管支を囲む平滑筋の収縮が起きます。収縮した結果気道が狭くなります。同時に粘液の分泌が盛んになり栓のように気道を塞いでしまいます。この粘液栓は粘りけが強く外に出すのにかなりの労力を要します。気道の抵抗が強くなって吐き終わるまでに時間がかかるようになります。喘息特有のヒューといった喘鳴は狭くなった気道を空気が通る音です。 

 アレルギー物質がない時、症状がない時にも気道にはアレルギーを起こす白血球(好酸球など)が待機しています。見た目が正常でも気道が過敏な状態が普段から続いていることに注意を払う必要があります。

発作が繰り返し起きると、気道の壁は徐々に厚くなり粘液の分泌腺が発達してきます(下図)。常に気道が狭い状態になり発作がない時にも呼吸に力が必要になります。

 


気管支喘息の方は症状に慣れてしまうためかかなり悪い状態になるまで我慢してしまうことが多いようですが、アレルギー性の炎症も長く続くと気管支の状態そのものを変えてしまうのですから早め早めの治療が必要です。特に「気道のアレルギー性の炎症を抑え、過敏な状態を改善する」ことが大切です。薬の治療としては吸入のステロイド薬がかなり効果を示します。

風邪や感染症の後に喘息が悪化しやすいので感染症の予防や治療も重要です。栄養面では鉄やビタミンC、たんぱく質の摂取により粘膜や抵抗力を強化したり、腸内細菌バランスを整えて免疫がアレルギー反応に傾くのを抑えるのがよいでしょう。最近では免疫制御におけるビタミンADの役割が解明されてきています。欠乏している栄養素の改善は花粉症やアレルギー疾患の症状緩和や予防にも効果があるようです。