血液検査の見方講座の2回目です。肝機能に分類されるASTやALTの上昇は肝細胞が壊れているサインという話をしました。ではASTやALTが低い場合は何を考えたらよいのでしょう。
検診ではASTやALTが高いと肝臓の細胞が壊れているサインとして注意されますが、低い場合には異常と言われることがほとんどないように思います。若い女性ではALTが一桁の人も珍しくはありません。血液中のASTやALTの濃度は肝臓の細胞内の酵素の量を反映しているので数値が低ければ酵素活性が低いのですからやはり問題です。
ASTやALTの構成成分について考えてみましょう。酵素はたんぱく質です。図のようにたんぱく質が立体構造を作っています。反応が起きる場所には補酵素が結合しています。ASTやALTの補酵素はビタミンB6から出来るピリドキサルリン酸です。
ビタミンB6が不足により補酵素が結合できないと酵素の寿命はとても短くなります。特に補酵素の結合していないALTの寿命はASTに比べてかなり短くなるのでALTがASTより低い場合はビタミンB6が欠乏していることを意味しています。
血液検査の読み方で困るのは、脂肪肝とビタミンB6不足が両方ある場合です。脂肪肝によってALTが上昇し、ビタミンB6不足によってALTが減少すると、相殺されてたまたまALTが正常範囲に入ってしまう可能性があります。
実際に、ビタミンB6が欠乏するとたんぱく質合成やエネルギー産生に関わる酵素の活性が低下するため代謝が低下し隠れ脂肪肝を起こす確率が高いのです。ビタミンB6を補給してALTの数値がポンと跳ね上がる場合もあります。数値だけで判断せず常によりよい食事を心がけることが大切ですね。