2013年9月25日

アンチエイジングを考える
-生きる力は食べる力①-


もたれてたくさん食べられない、食べているのに痩せる、痩せて力が出ないとおっしゃる方々がいます。痩せたい方にはうらやましい話かもしれませんが、痩せて力が出ない人にとっては切実です。食べる力は消化・吸収する力! カロリーだけでなく体に必要な栄養素をどれだけ消化・吸収出来ているでしょうか。

消化の初期段階で大切なのは咀嚼(かむこと)です。唾液が出て初期消化が始まるのに加え食道や胃、腸にも準備してね! と信号を送ります。次に胃ではたんぱく質を消化します。胃酸は出ていますか? 胃でたんぱく質を消化するための消化酵素は出ていますか?

胃酸と消化酵素の分泌能力を示す検査があります。ペプシノーゲン検査です。

胃はいくつかの領域に分かれていて、存在する細胞の種類が変わります。主に消化を担当する胃底部・胃体部では、壁細胞胃酸を、主細胞ペプシノーゲンIを、副細胞粘液を分泌します。出口近くは幽門前庭部と呼ばれ、幽門前庭部にある細胞はペプシノーゲンⅠⅠや消化管の蠕動や消化酵素の分泌を調節するホルモン様物質を出します。ペプシノーゲンは胃酸の助けを借りて鎖が切れ、たんぱく消化酵素ペプシンに変わります。

萎縮性胃炎にはいくつかのタイプがありますが、日本人に多い多巣性萎縮性胃炎は胃の出口付近=幽門前庭部から広がり、胃体部や胃底部の領域を減らしていきます。したがって、ペプシノーゲンⅠⅠを調べると胃粘膜萎縮が広がりを推定でき、ペプシノーゲンⅠを調べると胃体部での胃酸や消化酵素の分泌能力を推定することが出来ます。

日本人の萎縮性胃炎の多くはピロリ菌感染が原因です。ピロリ菌の感染の有無と胃粘膜萎縮の程度を組み合わせて判定する方法がABCD分類です。ペプシノーゲンⅠ/ⅠⅠ比が3.0未満でペプシノーゲンⅠが70未満の場合がペプシノーゲン陽性です。判定Dではピロリ菌がいないのにより重症の判定になっていますね。胃の粘膜萎縮が進み過ぎると、ピロリ菌の住む環境が悪化しピロリ菌が検出できなくなります。以前は住んでいたけど今はピロリ菌も住めないほど胃の変化が進んでいるということです。

ピロリ菌は胃癌の危険因子として最近注目が高まっています。次回はピロリ菌が胃粘膜萎縮を起こす機構や、なぜ胃癌が起きやすくなるのかについてお話ししてみたいと思います。