2014年8月16日

鉄はやさしく包んで


壊れ物や危険物は特殊な容器やトラックでしっかり包んで専用ルートで運びますよね。鉄は体に有用なミネラルですが、反応性も高いので体はしっかりと包んで運んでいます。

鉄が万が一にも体に害を起こさないように、

 

・吸収された鉄は、たんぱく質の中で安定型にして貯蔵します

・運搬時には、指令に従って専用たんぱく質が迎えに来ます

・細胞では、運搬たんぱく質ごと細胞に取り込みます

 

食品の鉄にはイオン型の鉄とヘムと結合した鉄(ヘム鉄)があります。野菜や鉄剤の鉄はイオン鉄、肉やレバーの鉄はヘム鉄です。イオン鉄は吸収率が悪く(5%ぐらい)胃酸や食物繊維などの影響を受けます。ヘム鉄にはイオン鉄とは別の専用通路があり吸収率は30%ぐらいです。

吸収された鉄は小腸の粘膜細胞に貯蔵されます。水に溶けにくい三価鉄Fe(III)になってからアポフェリチンと結合し安定な状態で存在しています。小腸の貯蔵庫が一杯になると細胞ごと便中に排泄されます。体内で不要になった鉄はたんぱく質が捕捉して肝臓や脾臓、骨髄などに貯蔵されます。

鉄が必要になった場合、指令が出てトランスフェリンが貯蔵場所まで迎えに行きます。運ばれた鉄はトランスフェリンに結合したまま細胞の中に入り、目的のたんぱく質に受け渡されます。このように、口から摂った鉄は過剰に入ることはありませんし体内ではたんぱく質と結合しているので害にもなりません。ただし鉄剤が飲めないからと言って鉄イオンを直接体内に注射してしまうのは大変危険です。

活性酸素が多い場所では鉄がたんぱく質から離れやすくなり、離れた鉄はフェントン反応を助けて活性酸素を発生しやすくなります。ですから鉄過剰を心配するより、たんぱく質をしっかり摂り、活性酸素を消去する能力を高めることが大切です。

栄養素は口から入れて体の仕組みに任せることが大切です。

栄養素は口から十分摂ってあとは体の調節に任せる