2023年5月1日

腸は治療の要


腸の多彩な役割がだんだん知られてきました。消化・吸収はもちろんのこと、有害物質を入れないバリアとしての役割、体内の有害物質の排泄、そして免疫の司令塔、脳機能への影響など数えきれない作用があります。共生する腸内細菌も、代謝や栄養、気分などに大きな影響を持っています。

腸が整わないと体の中も整いません。食事を頑張っているのに痩せない、サプリメントを飲んでも効果が出ない、そもそもお腹が張って食べられないなど、様々な治療を行ってきたのに治療効果が上がらない方は、一度本格的に腸の状態改善を試みてみましょう。

これまで、IgG型食物アレルギー検査、尿中有機酸検査、腸内フローラなどで腸の情報を集めてきました。それぞれに有効な活用方法はあるものの腸の状態を直接見るには物足りなく、もう少し情報が得られないものかと思っていました。そこに登場したのがGI-MAPという検査です。GI-MAPには

  便に含まれる遺伝子を増幅し、病原菌やピロリ菌、真菌・酵母、ウイルスなどを検出

  常在菌のバランスを調べ見やすく表示

  膵臓の消化酵素や胆汁分泌などの消化吸収能力

  潜血や有害発酵物などを測定し腸の病気のリスクを発見

  免疫状態、炎症状態、リーキーガットの検査

が含まれています。

 例えばこれまでSIBOと診断されても具体的にどの菌が増えているのかがわかりませんでした。GI-MAPを使えば、病原菌や好ましくない常在菌の増殖が具体的にわかり、どの抗生物質を使用すればよいかが判断出来ます。通常の腸内フローラ検査ではわからないウイルスや寄生虫、胃カメラで検出できないピロリ菌などを発見してくれる点も大きな利点です。

 SIBOでは、乳酸菌のサプリメントなどを飲むとお腹が張ってしまうという方が多いのですが、有害な微生物を減らしたうえで少しずつ有用菌を補充していくと、良い腸内細菌が腸の蠕動運動を適切にする発酵物質やビタミンなどの栄養素を作り出してくれて、健全な消化管機能と蠕動運動が回復し良好な治療効果に結び付く場合も多いのです。

 GI-MAPを手掛かりに治療が成功したとして、治療効果を維持するためには適切な食事とストレス解消がとても重要です。神経伝達物質のセロトニンの80%は消化管で作られています。ストレスを感じると腸のセロトニン分泌も影響を受け、蠕動運動を変化させます。またストレス状態が消化酵素の分泌を減らし、有害な腸内細菌を増やす効果が知られています。

 検査と治療のサイクルを繰り返しながら、自分の望む姿に少しずつ近づいていきましょう。