2013年8月19日

血液検査の読み方
-赤血球の大きさを読み解く-


検診で行われる血球検査。赤血球と白血球と血小板の数の他にヘモグロビン(血色素量)、ヘマトクリット、MCVMCHMCHCとたくさんの数値が並んでいます。貧血の指標はヘモグロビン=酸素を運ぶたんぱく質の濃度です。では他の数値は何を意味しているのでしょう?

ヘマトクリットは血液に占める赤血球の割合(%)です。貧血では低く、多血症や脱水ではヘマトクリットは高くなります。

MCVMCHMCHCは計算値です。赤血球の大きさを示すMCVと密度を示すMCHCが特に重要です。

若い人の貧血の多くは鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血では赤血球の中のヘモグロビンを合成できないので、小さな赤血球がたくさんできます。MCVは低くなります。

MCVが高い場合、大きい赤血球が出来ていることを意味しています。赤血球の遺伝子の合成不良が原因です。代表的な原因はビタミンB12と葉酸の不足です。核酸不足や一部の抗ガン剤が原因のこともあります。大きな赤血球は細い血管を通りにくいので細い血管の血行が悪くなります。赤血球の寿命が短くなると益々赤血球が大きく=MCVが高くなるので要注意です。大酒飲みの方や胃をとった方はビタミンB12や葉酸の補給を考えましょう。

MCVが低くMCHCが高い奇妙なデータを見た場合には赤血球の形の異常を考えます。遺伝子異常による鎌状赤血球症などで、これは日本人にはほとんど見られません。コレステロールの低下により丸くて変形しにくい赤血球が出来ることがあり、赤血球の寿命が短くなったり血行が悪くなったりします。

赤血球は自動血球計数器で測っているため、鉄欠乏による小さな赤血球と、ビタミンB12や葉酸欠乏による大きな赤血球が混じっている時には平均値が表示されます。MCVが正常でも栄養欠乏のことがありますので検査の解釈には注意が必要です。

 


 


暮らしに役立つ栄養療法
-夏バテ防止にビタミンB1と塩分補給-


毎日暑いですね! 体温調節にたくさん汗をかいた時には、水分だけでなく塩分の補給も必要です。今回は塩分がビタミンB1の吸収に役立つというお話です。

ビタミンB1は腸で能動輸送されています。能動輸送とは濃度の低い方から高い方に向かってポンプでくみ上げられているという意味です。そのポンプにナトリウムが大切な役割をしています。

 


「減塩が体によい」という考えが普及したために、運動選手までが減塩をしてしまう事例がありました。運動選手は大量に汗をかいて塩分を失っているので減塩をしすぎると体内の塩分量が不足してしまいます。塩分の不足は体液量や血圧などに影響を与えるだけでなく神経の働きやエネルギー産生機構、ポンプ機構にも影響を与えます。

減塩によりビタミンB1の吸収が不足した選手は、糖質や脂質からエネルギーを作ることが出来なくなります。エネルギー産生効率が運動のパフォーマンスに直結している運動選手にとってはビタミンだけでなく塩分の摂取バランスがカギを握っているのですね。

塩分は出る量と入る量のバランスが大切! 年齢・性別・運動の有無を問わず失った塩分は必ず補給するようにしましょう。

 

アンチエイジングを考える
-高齢者の血球減少と栄養-


血液中を流れる細胞を血球といいます。血球には赤血球、白血球、血小板があり赤血球だけが減少することを貧血といいます。年齢が高くなると赤血球だけではなく血球全部が減少する汎血球減少症にかかる率が高くなります。

 


赤血球の減少は酸素の運搬に不利になります。白血球減少は感染症の重症化や免疫力の低下、血小板の減少は出血に直結しますので重症の場合には骨髄の検査をしたり血球を増やす治療をしたりする必要があります。

検査をしても異常が見つからなかった場合、栄養不良が原因になっている可能性があります。細胞分裂に必要な栄養素、たんぱく質合成に必要な栄養素、それから血球を育てるゆりかごである骨髄の栄養分は足りていますか?

骨髄には新しい細胞のもとになりあらゆる血球細胞に変わることのできる血球幹細胞という細胞があります。それぞれ長い道のりの分裂と分化をへて血球細胞になります。

貧血というと鉄欠乏にばかり目が行きますが高齢者の貧血の原因は鉄よりもたんぱく質欠乏です。たんぱく質やビタミンB群の摂取量が減っているために体内のたんぱく質を十分作ることが出来ない可能性があります。

ビタミンAも重要です。ビタミンAは脂溶性ビタミンのため油脂が減ったり、胆のうなどの疾患で脂質の吸収が減った場合には欠乏が強くなります。ですから年齢が高くなっても良質の脂質を摂り続けることが大切です。

関節の痛みがある方はコンドロイチンやグルコサミンの合成能力が減っています。コンドロイチンとグルコサミンは骨髄の血球のゆりかごを快適にするのに役立っています。

食べられる量が減れば減るほど、質を高めて骨髄によい栄養を摂るように心がけましょう。