2012年12月1日

サプリメント小話
-ラクトフェリン-


今回はラクトフェリンのお話です。ラクトフェリンは、腸内細菌の改善、抗菌活性、活性酸素の予防、免疫の活性化など様々な働きを持つ優れモノです。

ラクトフェリンの大きな特徴は、鉄と結合する力が強いことでしょう。名前の由来はラクト(=乳)、フェリン(=鉄)。母乳にたくさん含まれている鉄結合たんぱく質で、血液中の鉄運搬たんぱく質トランスフェリンの実に300倍の鉄結合力があります。

腸の中にフリーで存在している鉄をがっちり結合すると、生育に鉄を必要とする大腸菌や連鎖球菌・ウエルシュ菌などは増えることが出来ません。一方、善玉菌に分類されるビフィズス菌やラクトバチルス菌は鉄が少なくても生育しやすいため、善玉菌の割合が増えていきます。

初乳(出産後数日間に分泌される母乳)には乳たんぱく質の約50%ものラクトフェリンが含まれていて、新生児の腸に善玉菌が増えるのを助け、免疫の未熟な新生児を感染から守っています。

ラクトフェリンが免疫を活性化する仕組みは最近のホットな話題です。腸にはM細胞という特殊な形をした細胞があります。M細胞がラクトフェリンを飲み込むように取り込んで、腸の内側で指令を出している樹状細胞に渡し樹状細胞を活性化します。

 


ラクトフェリンには直接細菌やウイルスの増殖を抑えたり攻撃したりする力もあります。ラクトフェリンが分解して出来たラクトフェリシンも強い抗菌力を持っています。

鉄は生命にとって重要なミネラルですが、フリーで存在するとヒドロキシラジカルという毒性の強い物質の発生源にもなる厄介な物質です。鉄結合力の強いラクトフェリンは、腸管内や体内、白血球などに存在するフリーの鉄を結合し毒性を防ぐ働きもしています。

ラクトフェリンは人の母乳には多いのですが牛乳にはほんの少し(0.02から0.04mg/ml)しか含まれず、しかも熱や酵素によって分解されやすいので精製するのは大変です。胃酸によって分解されるのでラクトフェリンを服用する際には食後1時間以上たってから服用しましょう。最近では歯周病への効果も期待されており、口の中で噛んだり溶かしたりして60秒ぐらい含んでから飲み込むと歯周炎の予防にもなります。

暮らしに役立つ栄養療法
-遅延型食物アレルギーとLGS(腸管壁浸漏症候群)①-


特定の食品を食べると口の周りや目の周囲が腫れたり、気管がぜいぜい言ったり、ひどい時にはショック症状を起こしたりすることがありますね。食事から10数分で表れるこのような症状は即時型アレルギーと呼ばれ主にIgE抗体が関係しています。食品との因果関係に比較的気づきやすいアレルギーです。

一方、遅延型食物アレルギーは食べてから症状が出るまでに1日から2日かかり、IgE抗体ではなくIgG抗体が関係しています。

遅延型アレルギーは

  • 食べてから症状発現まで時間がかかり因果関係に気づきにくい
  • 症状が漠然としている――頭痛、下痢、疲労感、 うつ、しびれや痛み、動悸
  • 複数の症状がある、症状が移動したり変化したりする

ことから、かなり疑って調べないと診断できません。

遅延型アレルギーによって起こりうる疾患や症状をあげてみましょう

  1. 慢性の胃腸症状(下痢や膨満感、消化不良など)
  2. 頭痛・めまい・耳鳴り、倦怠感・脱力感 
  3. 関節リウマチや原因不明の関節痛・筋肉痛、しびれ
  4. うつ症状、自閉症や注意欠陥・多動性障害と診断されるような症状
  5. 微熱、月経困難、生理痛、月経前症候群(PMS)、自律神経失調症
  6. 動悸・不整脈、胸痛発作
  7. アトピー性皮膚炎、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎・結膜炎

これらのリストには通常アレルギーとは思われていない症状が多く含まれています。普段行われている検査では異常が発見されず「気のせい」とか「精神的な問題」とされて心身症・うつ病の治療を受けている人も少なからずいるはずです。症状を起こす場所が移動したり変化したりするために「仮病ではないか?」と疑われることもあります。

次回は、どのような原因で食物アレルギーが起こりやすくなるのか、どうしたら予防したり改善させたりできるのかについてお話ししてみようと思います。

病気はなぜ起こる?
ⅠⅠ型糖尿病を治そう!②-


前回からインスリンが出ているのに血糖値が高いII型糖尿病の話をしています。今回はインスリンの効き目(インスリン抵抗性)に対する改善方法を考えてみましょう。

インスリンの効き目を悪くする主な原因には

    インスリンが過剰に出続けていること

    インスリンの作用を阻害する物質

の二つがあります。

 インスリン作用を阻害する物質の代表がTNFαです。TNFα内臓脂肪が肥大した時に増えるホルモン様物質(アディポサイトカイン)で炎症や高血圧、高脂血症、血栓症にも関係しています。図のように内臓脂肪からは複数のアディポサイトカインが分泌されていて肥大すると分泌比率が変わり、体に不都合な作用が増えます。

 

持続的なインスリン分泌もインスリンの効果を弱めます。一般の細胞ではインスリンが受容体に結合すると糖を細胞内に取り込む輸送体GLUT4など)が細胞の表面に現れます。この仕組みは疲れやすく(??)ずっと刺激が続くとサボタージュを起こし糖輸送体が細胞の表面に出てこなくなります。細胞にもオンとオフの切り替えが大切です。

内臓脂肪を減らすこと、インスリンが出ない時間帯をつくること、この二つがインスリンの効き目を回復させる鍵です。インスリンは糖を細胞の中に入れて脂肪として蓄える働きをしているホルモンですから糖とインスリンが供給され続けている状態では脂肪細胞がどんどん太ります。食事からの糖の供給がなくなりインスリンが低い状態が続けば脂肪細胞から脂肪が運び出されエネルギーへ変換するモードに切り替わります。つまり血糖値を上げないようにすれば、両方を効率よく実現することができます。

 


糖尿病と診断されてもがっかりすることはありません。タイプにあわせて最適な治療法を組み合わせていけば一生健康人と同じような生活が送れるのです。

2012年11月1日

サプリメント小話
-プロバイオティクスとプレバイオティクス-


腸内細菌を整える食品やサプリメントは大きくプロバイオティクスとプレバイオティクスに分類されます。

プロバイオティクスとは、人にとって有用な菌(を含む食品)のことで腸内細菌のバランスを整え、腸の働きを改善することによって病気を改善・予防することを目指します。

プレバイオティクスとは、有用な菌が定着し増えるのを助ける物質のことです。オリゴ糖や食物繊維などが代表的です。プロバイオティクスに含まれる菌が定着して増えるようにプレバイオティクスを併用することが多いので両方を含んだ食品や製剤も開発されシンバイオティクスと呼ばれています。

 


善玉菌には種類がたくさんあり、菌の種類によって特性や改善できる病気も少しずつ違っているようです。腸内細菌によって病気を改善したり予防したりするためには、菌の特性と病気がある程度合致している必要があります。そこで一人一人にテーラーメイドのプログラム4つのRによる様々な試行錯誤が行われています。4つのRとは、

Remove(除去)-有害物質やアレルギー源、病原性菌を除く

Replace(補てん)-低下した消化酵素を補う

Reinoculate(植菌)-病態・個体差に応じた菌種を補給(プロバイオティクス)

Regenerate(再生)-消化管粘膜を再生してバリア機構を維持(プレバイオティクス・グルタミン・ビタミンAなど)

のことです。テーラーメイド治療はお仕着せのオーダーメイド治療と違って一人一人に合わせて治療法を変えるため患者さんの主体的な参加が不可欠です。医療の未来像は「自分主体の治療」です。皆さまの積極的な参加を期待しています。

暮らしに役立つ栄養療法
-食物繊維と腸内細菌-


腸管全体で100兆個もの腸内細菌が常に生息しているそうです。人間の体の細胞の数は60兆個と考えられていますから大変な数の細菌と共生していることになります。口の中にも同じようにたくさんの細菌が共存しています。

人間の都合で腸内細菌を悪玉菌(害を及ぼす菌)・善玉菌(良い作用を持つ菌)・日和見菌(普段は害も益もないが状況によって悪さをする菌)に分けていますが、悪玉菌や日和見菌が完全になければよいというものではなくて、ある理想的なバランスで存在していることが大切なようです。それぞれの菌種は混じり合わずにお花畑のように集落を形成しています。

最近にわかに腸内細菌が注目されてきた背景には、腸の状態と全身の病気の関連が次々と証明されているという事実があります。関連がほぼ確立した病気には次のようなものがあります

l  過敏性腸症候群・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)

l  自己免疫疾患(慢性関節リウマチなど)

l  アレルギー(アトピー性皮膚炎など)

l  うつや自閉症などの脳・神経性疾患

l  糖尿病

l  慢性イースト菌感染症・カンジダ症候群

そこで、善い菌の割合が増えるように努力したいと考えるのは自然なことですね。食物繊維の摂取量を増やすことや定着可能な腸内細菌を定期的に摂ることはとても大切です。カンジダは糖分が大好きなので糖分の摂取を減らしてカンジダが増えないようにしましょう。パンなどに含まれる酵母(イースト)、コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、人工甘味料なども少なめにしましょう。同じものを繰り返し食べないようにする工夫も必要です。

腸の環境や栄養状態が悪いと腸粘膜がもろくなったりバリア機構が破綻して食物アレルギーも起きやすくなります。IgG抗体によって引き起こされる遅延型食物アレルギーは1日から数日後に症状が現れるため、症状と原因食物の関係に気づかないことがあります。

次回は遅延型食物アレルギーについてもう少し詳しく説明することにしましょう。

病気はなぜ起こる?
-ⅠⅠ型糖尿病を治そう! ①-


ホルモンが関係する最もポピュラーな病気の一つが糖尿病です。I型糖尿病ではインスリン分泌細胞が減ってしまうためインスリンそのものが不足していますが、II型糖尿病の多く方はインスリン分泌細胞が残っておりインスリンの分泌能力もあります。

そこで今回はII型糖尿病を治してしまおう!というお話です。 

なぜインスリンが分泌出来るのに血糖値が高いのか理由は主に二つ!

    血糖が上昇してからインスリンが分泌されるまでが遅い

    インスリンの効き目が悪い

今回はのインスリンの分泌機構について取り上げ、次回はインスリンの効き目について説明してみようと思います。

下図のようにII型糖尿病ではしばしば血糖値が上昇してからインスリンが分泌されるまでに遅れがあります。インスリン分泌が遅れるために血糖値が最初に大きく上昇します。遅れて分泌されたインスリンで血糖値が下がりきってもインスリンが引っ込むのが遅いために今度は血糖値が下がりすぎます。薬を使ってなくても「糖尿病だけど低血糖もある」という状態は珍しくはありません。

 


血糖値が下がりすぎるとかなり強い空腹感が起こり炭水化物や糖質が食べたくなります。そこでまた血糖値が上昇下降を繰り返し内臓脂肪も増えるという悪循環になってしまいます。ご飯をやめて肉や魚など血糖値を安定させる食べものに変えたら前よりも空腹感がなくなったという方もたくさんいらっしゃいます。

インスリンがタイミングよく出るためには分泌に関わる栄養素の補充が大切です。膵臓のβ細胞では血糖値が上昇すると次のような順番でインスリンが分泌されます。

  糖輸送体(GLUT2)が摂りこむぶどう糖の量が増える

  糖が代謝されエネルギー(ATP)産生が増える

  ATPの増加によってカリウムチャネルが開く

  細胞内の電位が変わってカルシウムチャネルが開く

  細胞内のカルシウム濃度の変化によってインスリンを含む顆粒が放出される

 


ビタミンB群の欠乏はステップ2を、カルシウムやマグネシウムの欠乏はステップ5での反応を鈍くします。また亜鉛欠乏はインスリン分泌に支障を起こします。そこでたっぷりのビタミンB群、カルシウム、マグネシウム、亜鉛を摂ると体の本来の調節機構を取り戻せる可能性があるのです。

次回はインスリンの効き目の改善方法について考えてみましょう。