2010年4月1日

食事療法の嘘?本当?
-「糖は脳の栄養?」について-


「脳はぶどう糖を栄養としているので、糖分を摂りましょう」という宣伝文句を見たことがありますか?この点を考える上で二つのポイントがあります。

    脳は糖だけでなく脂肪を分解して出来る「ケトン体」をエネルギー源として利用することが出来る

    脳へのぶどう糖の供給は常に一定であることが望ましい

については基礎医学の教科書にも書いてありますし、糖質制限食を世に広めている江部先生の著書をぜひご参照ください。さてについてここではお話しましょう。脳へ供給される血液中のぶどう糖は常に一定値が望ましく高すぎたり低すぎたり乱高下したりするのは身体にとても負担になります。一部の人は糖を「砂糖やぶどう糖」「白米」の形で食べると血糖値が急激に上昇した後に急激に下がったりしてしまいます(この状態を機能性低血糖症と呼びます)。また糖尿病の人は血糖値が高いのにそれをうまく利用することができません。「血糖を一定に保つためには血糖を急激に上昇させてはいけない」ということがわかります。玄米やライ麦・全粒粉などやたんぱく質、野菜(糖分の多い野菜は除く)からぶどう糖を摂取することが大切です。逆にスポーツ飲料や甘いお菓子などは危険です。また無理に穀物を摂らなくてもたんぱく質を分解したアミノ酸からぶどう糖を作り出すこともできます。

「脳に糖を送りたかったら糖を摂らない」という新常識をぜひ覚えてください。

鉄の話 ②
鉄の働き-不足したらどうなるか




 
 前回は「危険な」鉄に対し体が23重の防御機構を持っている話をしました。

今回は鉄がどのように役立っているかの話をしたいと思います。体に含まれている鉄のうち6070%は赤血球のヘモグロビンに含まれて酸素を運んでいます。酸素は生存に不可欠な物質です。約30%は体内に貯蔵され、残りのたった0.7%が酵素の中で「機能をしている鉄」です。

 酸素は生存に不可欠なので貯蔵鉄がほぼゼロになっても体はヘモグロビンを作り続けます。最優先でヘモグロビンに回す結果「機能する鉄」に回る分がほとんどなくなります。たった0.7%であっても「機能する鉄(含鉄酵素)」が不足すると大変なことになります。

 例えば、エネルギー産生が出来なくなります。活性酸素の消去が出来なくなります。髪や爪、皮膚、粘膜の再生が出来なくなります。神経伝達物質が出来ません。白血球が細菌を殺すことも出来ません。代謝がものすごく低くなって何も出来ない体になります。

頭痛や肩こりが起こり、冷え性が続き、のどにいつも何かつかえた感じがして髪や爪には生気がなくぶつけてもいないのにあざができ、いつもうつ気分で何も考えられなくなります。こういった症状はゆっくりゆっくり進むので気づいた時にはいつから症状があったかわからない位です。自分に症状があることさえ気づかない人さえいます。

 ヘム鉄を摂取するだけで、驚くほど症状が改善します。「もしかしたら自分は鉄欠乏なのではないか」と疑うことが大切です。鉄欠乏の診断についてはまた次回に説明します

分子整合栄養医学との出会い

 今回のコラムでは分子整合栄養医学との出会いについてお話ししようと思います。これまで日本の医療とは別の道を歩んでいた分子整合栄養医学が、後継者を育てるために医師を対象として「分子整合栄養医学基礎講座」を開き始めたころでした。

 事前にいただいたパンフレットにライナス・ポーリング博士の名前を見て正直「こんな講演会に出席して大丈夫だろうか」と思っておりました。現在の医学教育では基礎的なビタミンについては勉強するものの「ライナス・ポーリング博士=メガビタミン」「異端」と無視されていたからです。日本の医学界では内容の検証や科学的な真偽の判定はそもそも行われていなかったと思います。

 講座に出席して今まで如何に偏見と先入観に囚われていたかわかりました。講師の金子雅俊先生は「科学的に物を考え判断すること」を諄々と説いていました。そして分子整合栄養医学の先駆者たちは私たちが習う機会が全くなかった医学的知識やデータを豊富に持っていることを知らされたのです。

 現在、分子整合栄養医学の先駆者となっている溝口徹先生(新宿溝口クリニック)も最初は具合の悪い奥様の治療のため「藁をもつかむ気持ち」で金子先生を訪ね「こんな治療に本当に効果があるのか」と思いながら始められたそうです。

 分子整合栄養医学を積極的に進めている人々には共通する経験があるように思います。

現在の治療に限界を感じていたこと
分子整合栄養医学の科学的な理論づけと豊富なデータに目をみはったこと
(医学には科学的にすべてが説明されているものの方が少ないのです)
自ら実践し理論通りの変化や症状の改善が起こることを目の当たりにしたこと

 そして私の知っている限り、分子整合栄養医学の実践者は患者や仲間を「Co-learner(共に学ぶもの)」と呼んで深い尊敬と愛情を持って接しています。
 サプリメントに関するうわさや報道で不安になることもあると思います。何が正しいのか自分の目で見、科学の視点で考え判断を下してほしいと切に願っています。

トマス・エジソンの予言
「未来の医師は、薬を使わず、食事を重視し、病気の本来の原因を探し、予防するという、人間の基本を大事にして治療をするであろう。」