2012年8月1日

サプリメント小話
-カルニチン-


今回は脂肪の燃焼(エネルギーへの変換)にとても大切なカルニチンという物質について説明しましょう。糖分などのエネルギー源の供給が減ると脂肪細胞から脂肪酸(一本の鎖の形の脂肪)が血液中に供給されます。血液中から細胞に入った脂肪酸はミトコンドリアで酸化を受けATP(エネルギー)を産生します。このミトコンドリアの内膜を通過するときにカルニチンが必要です。

 


カルニチンが不足すると脂肪酸からエネルギーを作り出すことが出来ないため、慢性的な疲労感を感じ、血液中の脂肪が増え(高脂血症)、内臓脂肪が増えてしまいます。

カルニチンはリジンとメチオニンからビタミンCを補酵素として作られます。ビタミンCは単なる美容効果や感染症予防だけでなくエネルギッシュな体質を作り出すのにも役立っているのですね。

暮らしに役立つ栄養療法
-糖質制限食における脂肪の摂り方①-

 糖尿病や肥満の予防・治療に糖質や炭水化物を減らす糖質制限食が有効であるというデータが次々に出ています。ただし糖質制限食という言葉はたんぱく質と脂質は無制限でよいかのような誤解を与えることがあります。たんぱく質や脂質にも適正な種類や量があり一人一人に合わせた調整が必要なことはいうまでもありません。
今回は脂質に焦点を当てて何に注意すべきかを述べてみたいと思います。
血液検査で中性脂肪が高い方の場合、最初の段階では食品に含まれる中性脂肪の量もある程度減らした方がよいでしょう。理由は二つ、これまで摂り過ぎていたカロリーを調整すること、これ以上中性脂肪を供給しても細胞が血液中の中性脂肪を取り込めないのでいったん供給をお休みして内臓脂肪が細胞に入れるようになるまで待つということです。
脂質には中性脂肪のほかにリン脂質などの必須脂肪酸とコレステロールがあります。
本来コレステロールは体内合成量の割合が高く基本的には摂取量を増やしたからと言って血液中の量が無制限に上昇するわけではありません。肥満でもコレステロールが低すぎる方は結構いますのでコレステロールが低すぎる方は積極的にコレステロールを摂ってください。
血液検査でいつもコレステロールが高い方の原因は二つ考えられます。一つは遺伝的にコレステロールを利用しにくい体質を持っていること、これは家族性高コレステロール血症といわれ動脈硬化や心臓病を起こしやすいので特別な注意が必要です。もう一つは血液中の活性酸素が多いことです。血液中の活性酸素が多いとコレステロールが酸化・変形して利用できなくなり血管壁にたまります。細胞はコレステロール不足になるのでコレステロールの合成指令が出てさらにコレステロールが上昇します。食べ物のコレステロールを減らすよりも抗酸化ビタミンを摂ることが解決方法です。
体に良いと考えられていた必須脂肪酸についてもいくつか注意点があります。それはまた次回にゆずることにしましょう。

病気はなぜ起こる?
-内臓脂肪はなぜ悪い?-


メタボリックシンドローム(通称メタボ)の日本語名は内臓脂肪症候群です。これまでは成人病とか生活習慣病と呼ばれていたものと基本的には同じです。以前は40歳を過ぎると高血圧や高脂血症、糖尿病が増えてくることから「成人の病気=成人病」と呼ばれていましたが発症がどんどん低年齢化し、食事や運動、睡眠などの生活習慣に関係が深いことから生活習慣病と呼ばれるようになりました。そして現在は「内臓脂肪が増えること」が根本原因であることがわかってきたために「内臓脂肪症候群」という名前に変わりました。

では、なぜ内臓脂肪が多いとこれらの病気になりやすいのでしょうか?これまで脂肪細胞はただの貯蔵庫と考えられていました。ところが研究が進むにつれ脂肪細胞自体が活発に代謝を行い様々なホルモンや伝達物質を出していることがわかってきました。例えば TNF-αという物質はインスリンの効き目を悪くして糖尿病を悪化させます。PAI-1という物質は血栓が溶けるのを阻害します。アンジオテンシノーゲンは血圧の上昇に関わっています。脂肪細胞が肥大化すると健康に良い物質の分泌が減り、病気を促進する物質の分泌が増えてきます。脂肪細胞の出す物質は食欲や生殖能力、免疫力まで影響を与えます。

 


やせていても内臓脂肪が肥大している人がいます。というのも脂肪細胞が肥大する原因は血糖値の上昇と過剰なインスリンの分泌だからです。インスリンは糖を脂肪にかえて脂肪細胞を太らせます。肥大した内臓脂肪はインスリンの効き目を悪くするのでますますインスリンが大量に分泌される悪循環になります。脂肪細胞の数は成長期に決まると言われ一度増えると減りません。子どもの肥満はより深刻です。

正しい生活習慣により病気の根本原因となる内臓脂肪を減らしていきましょう。